第六話 理由と失いたくないもの
かなり久しぶりの投稿です!
第六話 理由と失いたくないもの
「・・・緋梅、傷ができる。」
水知はそう緋梅に声をかけた。無意識のうちに強く握っていたのだろう。緋梅の手の平にはあと少しで血がでる程の跡がついていた。
「・・・どうして、受け入れたのですか。」
都の現状を考えれば、最善の策かもしれない。それで多くの命が救われるのだから。
だが、一つでも過ちが起きてしまえば、水知の命は危うくなる。
「ここ最近、瘴気の流れがおかしい。だから、陰陽師達と共に、原因を探る。」
「・・・瘴気。」
緋梅は、その言葉を聞き、梅園にある大樹や木々達に思いをはせる。
二年前の霜月、梅園に咲く梅の花が突如開花した。梅の花の開花時期は如月から弥生にかけてだが、時によっては睦月の頃から咲くときもある。だが、霜月で咲くことはない。狂い咲きである。
原因はすぐに分かった。その当時の都を襲った豪雨で川が氾濫し、その川の水と共に流れ込んできた瘴気であった。その瘴気によって、花を咲かせることができなくなった木も多く、かろうじてその命を繋ぎ留めたに過ぎなかった。大樹に大きな影響がなかったことが不幸中の幸いであった。
「少しでも瘴気がなくなれば、また、直接花便りを送ることができるだろう。それに緋梅自身の負担も軽減されるはずだ。」
この数年で瘴気がさらに濃くなっており、二年前の狂い咲きのこともある為、強力な結界を大樹を中心に一年中張り続けている。しかし、いくら梅園全体に結界を張っていても、少し気を抜くと瘴気は梅園に流れ込んでくる。だから、常に警戒を怠ることはできない。
結界を張るだけでもかなりの力を使う為、瘴気に弱い緋梅にとって、最大の命取りになりかねない。
もし、緋梅を失えば大樹は枯れ、梅園は荒れ果てた地になってしまう。
大樹をはじめ、梅園に咲く花達を心から慈しみ守ってきた緋梅。そんな緋梅を近くで見てきたからこそ、水知は嵩臣の話を受け入れたのである。
「・・・嵩臣殿以外の陰陽師の方とも行動されるのですよね。」
必ずしも嵩臣が側にいるとは限らない。時には、別の陰陽師と行動することもあるだろう。
「緋梅、陰陽師達にも事情は説明してあるから、僕の居ない所で水知が祓われることはないし、そこら辺の事は大丈夫だよ。」
嵩臣の言葉に緋梅は静かに頷いた。だが、表情から憂いは消えない。
そんな緋梅の頭を水知は優しく撫でた。
緋梅は水知のこの温かい手が好きだ。だからこそ、失いたくないのだ。
「無理はしないでください。」
「・・・分かっている。」
水知は緋梅の目を見て頷いた。
約二年ぶりの投稿となる今回は緋梅と水知のメインのお話になりました。
それでは、花の章のちょこっと説明書(このタイトルは今回から使っていきます)
今回は『花護目』についてです。第二話でも軽く説明してありますが、これは白櫻・桃姫・緋梅が担っている役目の名前です。それぞれの園にある大樹を守ることが花護目としての最大の役目です。
なぜ、『花護目』と呼ぶのかは今度の物語に答えがありますので、お待ちください。
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第七話以降もよろしくお願いいたします。また、Twitterもやっておりますので、そちらもよろしくお願いいたします。