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花の章  作者: 藤弥伽
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第三話 束の間の再会

第三話 (つか)の間の再会


 「緋梅(ひうめ)!」

 「桃姫(とうき)白櫻(はくおう)、久しぶり。花便り、持ってきた。」

 緋梅は抱えていた梅の枝を桃姫に渡した。渡された枝には数輪の白い梅の花が咲いていた。

 緋梅自身が花便りを持って、庭園に来るのは数年ぶりである。それまでは、自身の分身である精霊(せいれい)に花便りを持たせ、桃姫の元に届けていた。

 「今年は去年より遅かったけど、何かあったの?」

 「今年は遅咲きだっただけ。―大丈夫。瘴気(しょうき)は梅園の中まで入ってこれないように結界を張ってあるから。」

 白櫻の心を見透(みす)かしたかのように緋梅は言った。緋梅は瘴気に弱い。それは梅園に咲く花も同じである。瘴気によって枯れてしまった梅の木は、一本や二本ではすまない。何十本もの梅の木が、奇跡が起きない限り花を咲かせることができなくなったのだ。今では、この都で梅の花を見ることができるのは、緋梅の所と、山奥にある数か所のみである。

 「しかし、どうしてこうも都中に瘴気が(ただよ)ってるのかな?おかげでこっちの仕事が増えるばかりだよ。はあー、のんびりと休みたい。」

 「わたしにはいつものんびりと過ごしているようにしか見えませんが。」

 桃姫からの反論に嵩臣(たかおみ)は「ひどいな」と苦笑いで答えた。

 「でもさ、嵩臣殿の仕事って帝からの勅命(ちょくめい)なんでしょ?断ることもできないんだし、諦めなよ。」

 白櫻の言葉に桃姫と静かに見ていた青年―水知(みずち)はしきりにうなずいている。

 だが、白櫻が言ったことは嘘ではない。嵩臣は生まれた時から陰陽師(おんみょうじ)と同じ――いや、それ以上の霊力を持っていた為、帝から都中に漂う瘴気を(はら)うように命じられている。そして、時には妖も祓うことがある。しかし、嵩臣にとって幼少期より続けてきたこの仕事はとてつもなく面倒なのである。庭園に来ては愚痴(ぐち)を言っている始末で、その(たび)に白櫻達はまた始まったとばかりに聞き流しているのだ。

 「ですが、その仕事は嵩臣殿にしかできないことだと思います。嵩臣殿が瘴気を祓ってくれるおかげで、今年は直接花便りを送ることができました。ありがとうございます。」

 「礼を言われることではないよ、緋梅。無事に花便り送れてよかったね。」

 緋梅からの礼の言葉に対して、笑顔で答えた嵩臣。しかし、その顔を見た緋梅以外の三人は身構(みがま)えた。至って普通の会話のように聞こえるにも関わらず、三人が身構えるのはなぜかというと――

 「ところで、僕の所にお嫁に来ない?桃姫、緋梅。」

 そう、これが―嵩臣のこの言動が三人が身構えた最大の理由である。

 

 

第三話は緋梅メインのつもりが嵩臣メインぽくなってしまいましたね。さて、今回も登場人物についてご紹介します。

 嵩臣たかおみ・・・生まれた時から、陰陽師越えの力を持っている。面倒くさがり。だが、やる

            ときはやる。しかし、事あるごとに桃姫と緋梅を口説こうとするのがキズ。

 水知みずち・・・第二話での登場から一度もセリフを言ってませんが、水を操る妖です。とても

           真面目。緋梅とは関わりが深い。


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