第二十三話 桃櫻の受け渡し
第二十三話 桃櫻の受け渡し
桃姫は花便りを白櫻の方に差し出した。その手は少し震えていた。
白櫻は差し出された花便り―桃の枝を見た。
枝先には、大き目な桃の花が何輪も付いていて、どれも花びらの先まで凛としている。これは、桃姫が花護目として大樹に寄り添い、守っていたという証でもある。
白櫻と桃姫のやり取りを、緋梅達は少し離れた所から静かに見守っていた。
花便りは花護目同士のやり取りであるため、第三者はもちろん、同じ花護目である緋梅や先代の花護目達でも口出しすることは許されない。なので、桃園からの花便りを受け取る受け取らないの判断は全て白櫻に委ねられているのである。
「…もどかしいわね。」
「わしらは既に役目を譲り渡した身じゃ。致し方あるまい。」
「それもそうですね。」
先代の花護目達の会話を緋梅は白櫻と桃姫から視線を外さず、ただ聞いているだけだった。
白櫻と桃姫の間には、未だに静かな時間が流れている。
だが、それを壊すかのように白櫻は微笑んだ。そして、桃姫の方へ手を伸ばした。
「確かに、花便りを受け取りました。」
そう言って、白櫻の手に桃園からの花便りが渡ったのである。
これは花便りが成立したことを意味する。
それを知った桃姫は、不安と緊張から解放されたのか、その場に座り込んでしまった。
「桃姫、大丈夫か?立てそうか?」
白櫻が声をかけても、桃姫からの返答は無く、ただ一点をぼんやりと見ているようであった。
対応に困った白櫻に対して、緋梅が側に寄って来た。
「桃姫、白櫻に受け取ってもらえるか不安と緊張してたから、受け取ってもらえて安心したんだよ。」
「そうだったんだ。」
緋梅の言葉を聞いて、白櫻は桃姫から受け取った花便りを見た。
花便りは相手が受け取らなければ成り立たない。その重責を白櫻は少しだけ理解ができた。
「緋梅も不安だった?受け取ってもらえるのか。」
白櫻がそう緋梅に問いかけた。
しかし、緋梅は微笑むことしかしなかった。
「花便りも無事に送ることができたのだから、皆でお茶でも飲みましょうか。」
緋梅の表情に疑問を覚えた白櫻は、聞こうしたのだが、それを遮るかのように先代の桃園の花護目が声をかけた。
「なら、わしは湯を沸かすかのう。緋梅や、茶菓子を台所の棚から持ってきてはくれんかのう。」
「分かりました。」
白櫻の祖父に言われ、緋梅は白櫻の祖父と共に屋敷の台所の方へ行った。
花の章第二十三話を読んでくださり、ありがとうございます。
前回より約2カ月ぶりの投稿となりまして、申し訳ありません。
それでは、花の章ちょっこと説明書
今回は、前回の後書きで桃姫の体力についてお話をしましたので、今回は白櫻の体力についてです。
彼の場合は、ほぼ毎日のようにお酒を飲んでいる為、体力はないだろうと思われますが、意外と体力はあります。自分でも酒造りをしたり、何気に面倒見もいいので、小さい子を片腕に1人ずつ抱っこすることもあるので、体力は嫌でもついた感じです。(このエピソードもどこかで書きたい。)
ちなみに小さい子を抱っこしている姿を見た桃姫は、白櫻の意外な姿に驚いていました。そして、彼のおじいさんは、ニコニコと見守っておりました。
花の章第二十三話「桃櫻の受け渡し」を読んでくださり、ありがとうございます。
ご意見・ご感想をお待ちしております。
そして、新作も投稿していく予定です。(早よ、書けや。)
次回第二十四話もよろしくお願いいたします。
藤弥伽




