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花の章  作者: 藤弥伽
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第二十話 花の悩み、最大の謎

第二十話 花の悩み、最大の謎


 「もう何よ。なんで止めるのよ。」

 白櫻に止められたことが不満だったのか、桃姫は(ほほ)(ふく)らませて、不貞腐(ふてくさ)れてしまった。

 「緋梅が目を回したんだから当たり前だろう。それに、お前は加減を覚えろよ。」

 普段は桃姫が白櫻に説教するのだが、今日は逆になってしまった。

 「だって、嬉しかったんだもの。緋梅がわたしの為に作って贈ってくれたんだもの。当然じゃない。」

 「だからと言って、あそこまで振り回す必要はないだろう。見てみろよ、緋梅を。」

 そう言われて、桃姫は白櫻の視線の先にいる緋梅を見た。

 緋梅は目が回ってしまって、縁側(えんがわ)に座ってぐったりと休んでいた。

 「それでも、嬉しかったの。」

 桃姫は緋梅から貰った領巾(ひれ)を見つめた。

 桃姫に似合うように、桃姫の舞が少しでも綺麗に見えるようにと考え作ってくれた薄紅梅色(うすこうばいいろ)の領巾。その領巾が桃姫から見ると、輝いているかのように見えた。それくらい、桃姫は嬉しいのである。

 「お礼をしたいのはわたしの方なのに。」

 「・・・そっか。」

 桃姫のひっそり言った言葉に白櫻は深く聞かなかった。

 それからしばらくして、今度は桃姫が花便りを送る日が来た。

 花護目(かごめ)となって初めて花便りを送るため、桃姫は不安になっていた。

 「そんなに不安がらなくても大丈夫よ、桃姫。」

 そう優しく声をかけたのは、先代の桃園の花護目であった。

 「梅園から花便りを貰ってから、より一層大樹に寄り添って来たでしょう。それに桃の枝を見てごらんなさい。綺麗に花を咲かせているでしょう。」

 先代はそう言われて、桃姫は枝いっぱいに大輪の花を咲かせている桃の枝を見た。

 見て目は、例年咲かせているものと変わりはないが、それでも、きちんと桜園の花護目―白櫻が受け取るか心配であった。

 花便りは、各園の花護目が花便りを受け取らなければ成立はしない。

 だが、受け取らない理由は、桃姫達―当代の花護目や先代の花護目、そして、博識と(うた)われる白櫻の祖父でさえ分からないのである。

 しかし、先人が残した文書にはこう(しる)されていた。

 ―花便りを(こば)む理由は、その時が来れば、(おの)ずと分かるであろう―

 その時がいつなのか、もしかしたら今回なのではと、桃姫は深く、悪い方向へと考え込んでしまった。

 「ところで桃姫?緋梅に渡す物はできたのかしら?」

 不安に押しつぶされて黙っている桃姫に先代はまた優しく声をかけた。

 「はい。昨日やっと出来ました。」

 そう言って、花便りと一緒に持っていた小さな包みから、花があしらわれた小さな物を取り出した。これは領巾のお返しにと緋梅のために作った髪飾りである。

 大樹に寄り添う(かたわ)らで、緋梅への贈り物を用意していた桃姫。緋梅が桃姫のことを思って作ってくれたのと同じように、桃姫もまた緋梅を思って作ったのである。

花の章第二十話を読んでくださり、ありがとうございます。


今回は、花便りの秘密の話を少し書きました。白櫻はきちんと桃姫からの花便りを受け取ってくれるのでしょうか?

それでは、今回より復活の花の章ちょっこと説明書

今回は、第十一話の白櫻のセリフや前回から登場している、先代の桃園の花護目についてです。

第二十話を読んでいただくとだいたいは予想はつくかと思いますが、先代の桃園の花護目は女性です。優しい方です。

そして、桃姫との関係は親密にあります。それは、今後のお話で書きます。(なんか、今後のお話で云々みたいなの多いですが・・・。)ちなみにまだ幼かった白櫻の面倒も時折見てくれていました(このエピソードも書きたい・・・。なんかこれもよくこのコーナーで言っているような・・・。)


花の章第二十話「花の悩み、最大の謎」を読んでくださり、誠にありがとうございます。

皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。

Twitterもやっておりますので、そちらもよろしくお願いいたします。

花の章第二十一話以降もよろしくお願いいたします。


藤弥伽

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