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花の章  作者: 藤弥伽
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第十九話 薄紅梅色の贈り物

第十九話 薄紅梅(うすこうばい)色の贈り物


 先に贈り物をしたのは意外にも緋梅からだった。

 緋梅にとって桃姫は水知以外で初めてできた友達であった。そして、庭園で会う(たび)にいつも一緒に遊んでくれたり、側にいてくれたのであった。

 白櫻と桃姫が花護目(かごめ)になった年の冬。

 緋梅が花便りを持って庭園を訪れた。庭園には白櫻と桃姫の他に、そして、新たな花護目の仕事を見守ろうと桜園と桃園の先代花護目も居た。

 「あら?緋梅、花便りと一緒に持っている包みは何かしら?」

 桃姫の言葉に、皆の視線が緋梅と緋梅が持っている包みに向く。

 「これは、桃姫に渡したくて持ってきたの。」

 「わたしに?」

 緋梅は庭園の屋敷の縁側(えんがわ)に花便りと包みを置き、包みを開いた。その中からは薄紅梅色の布が出てきた。

 「綺麗な色の布だね。緋梅が染めたの?」

 白櫻の言葉に緋梅は頷いた。

 「綺麗な色ね―あれ?」

 桃姫は布を手に取ったのだが、布に違和感を覚えた。少し広げてみると、普通の布よりも軽かった。

 「実はこれ、領巾(ひれ)なの。」

 桃姫の表情を見た緋梅は布の正体を言った。

 「桃姫は舞が得意だから、桃姫と桃姫の舞は少しでも綺麗に見えるといいなと思って・・・。それに桃姫には感謝しているから。」

 緋梅は桃姫が花護目の役目を引き継ぐ話を聞いた時、感謝の気持ちを伝えたくて贈り物を考えた。

 桃姫は舞の名手として妖の間で有名であったことを思い出し、その舞が少しでも綺麗に見えるようにと領巾を作ることにしたのだ。

 「それにしてもよくできているわ。色も本当に綺麗だし、桃姫の舞をさらに綺麗に見えるでしょうね。」

 先代の桃園の花護目が領巾の出来を褒めた。

 しかし、桃姫は領巾を手にしたまま、黙っていた。

 「桃姫?」

 気になった緋梅は桃姫に声をかけた。

 すると、桃姫は緋梅に思いきり抱きついた。

 「桃姫、どうしたの?」

 「嬉しいわ!とっても嬉しい!ありがとう、緋梅!」

 桃姫は緋梅を抱きしめたまま、くるくる回りだした。

 二人が着ている着物と薄紅梅色の領巾、そして、周りの環境も(あい)まって、楽しそうに舞っているかのように見える。

 「あらあら。桃姫ったら相当嬉しかったのね。あんなにはしゃいじゃって。」

 先代の桃園の花護目が微笑んで見ている。

 「あんなに回って、目が回らないのか。」

 白櫻は呆れたかのように、桃姫と緋梅を見ている。

 「と、桃姫・・・そろそろ、離して・・・。」

 緋梅は目が回ってしまっている。だが、桃姫はそれに気づかないまま、庭園を回り続けている。

 緋梅が目を回したのに気づいた白櫻が慌てて止めに行った。

花の章第十九話を読んでくださり、ありがとうございます。


今回は、桃姫と緋梅が互いに贈り合った贈り物についてのお話になりました。

桃姫はめちゃくちゃ喜んでおります。それは緋梅を振り回してくるくると回りだすほどです。

(実はこれ、桃姫の癖です。白櫻は呆れて遠くから見ています。)


花の章第十九話「薄紅梅色の贈り物」を読んでくださり、誠にありがとうございます。

ご意見・ご感想をお待ちしております。

Twitterもやっておりますので、よろしくお願いいたします。

そして、次回から花の章ちょっこと説明書も再開しますので、お待ちいただけたら幸いです。


藤弥伽

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