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花の章  作者: 藤弥伽
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第十五話 薬にもなり毒にもなり

第十五話 薬にもなり毒にもなり


 「飲ませてもらえなかった?」

 「言われたのです。桃桜酒(とうおうしゅ)はわたしにとって毒になるお酒だと。」

 嵩臣の言葉に頷き、そう緋梅は答えた。

 「桃桜酒は桜園と桃園にある大樹が咲かせた花を使って造っている。俺や桃姫はそれぞれの園の花護目だから問題なく飲めるんだよね。」

 「それに、わたし達二人にとっては薬酒(やくしゅ)なのです。」

 白櫻と桃姫は話した。

 酒造りの名人と呼ばれる白櫻の祖父が造った酒は薬となると言われている。中でも桃桜酒はかなり特殊な薬酒である。だが、桃桜酒が薬として作用するのは桜と桃に所縁(ゆかり)のある妖だけであり、所縁のない妖にはただの酒にしかならない。

 そんな薬酒が時として猛毒と化すことがある。それは薬酒を飲んではいけない者が口にする時である。

 名人と言われる白櫻の祖父が造る酒には大きな欠点が一つだけあった。それは自分の造った酒がすべての者が飲めない――必ず一人は、祖父の造った酒が毒と化し、命取りになるということである。

 「じいさんはその欠点を直そうとしたよ。けど、どうしても必ず一人はじいさんの酒が飲めない者が出てくるんだ。」

 そう、白櫻は辛そうに言った。

 「それは人間も含まれるのか。」

 「もちろん。じいさんの酒は妖や人間関係なく、誰でも飲める。現に先々帝が抱えていた陰陽師の一人はじいさんの酒を好んでいたからね。」

 嵩臣の質問に白櫻はそう答えた。

 人や妖関係なく―という言葉が付くのはかなり難しいことである。いくらそれを実現したくてもできないのがほとんどだ。

 しかし、白櫻の祖父はそれを実現させた。先々帝お抱えの陰陽師をはじめとした人間にも、自分が造った酒を飲んでもらえるようになった。

 「だからこそ、その欠点があることが辛いんだろうな。少しでも時間があれば、改善点を探して酒造りをしているんだよ。」

 「それで桜酒(おうしゅ)という名のお酒が出来たのだったわね。」

 「ああ。」

 桜酒とは、白櫻の祖父が造った酒の中で、桃桜酒に並ぶ薬酒であり、ほのかに桜の香りがし、甘味のあるお酒なので、誰もが飲みやすい酒と言われている。白櫻の祖父も桜酒を気に入っていて、よく飲んでいる。

 「桜酒・・・造り主が好んで飲む酒・・・。」

 「嵩臣殿、どうかした?」

 考える素振りを見せた嵩臣に白櫻は声をかけた。

 「白櫻、その桜酒という酒は花見酒(はなみざけ)という名も付いていないかい?」

 嵩臣の問いに白櫻は首を(かし)げた。

花の章第十五話を読んでくださり、ありがとうございます!藤弥伽です。


約一か月ぶりの投稿となりました。本当に亀よりも遅い投稿で申し訳ありません。


それでは花の章ちょっこと説明書

第十四話で出てきました、白櫻の祖父のおつまみについてです。

第十四話で書きました通り、このご老人、本当に不思議な物ばかり食べております。(皆さんはちゃんとしたおつまみを食べてください。)けれど、そんなものを食べても白櫻の祖父は一度もお腹を壊したことはありません。お気に入りのおつまみは、柿です。ちなみに、胃が丈夫な彼のお孫さん(白櫻)は肝臓が丈夫です。(だから、お酒をいくら飲んでも悪酔いを全くと言っていいほどしません。が極稀にします。)


花の章第十五話「薬にもなり毒にもなり」を読んでくださり、誠にありがとうございます。

これからも亀よりも遅い投稿になってしまうかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

そして、新作の物語ですが、現在選考中ですのでお待ちください。(なんとか候補を絞り込んでおります。)


藤弥伽

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