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花の章  作者: 藤弥伽
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第十二話 ある日の春の庭園にて

第十二話 ある日の春の庭園にて


 三樹(さんじゅ)美花(みはな)嵩臣(たかおみ)が出会う前の年の春。桜園の大樹が花を咲かせた事を知らせる為に、三樹の美花と白櫻の祖父が庭園に来ていた。

 「今年も綺麗に咲いたのね。」

 桜の枝を手に持ち、花びらを見ていた桃姫が言った。

 「ああ。今年は蕾の期間が長かったから、心配だったけど、きちんと咲いてくれて安心したよ。」

 蕾を付けたのが早かったので、例年より早めに開花すると白櫻は予想していた。しかし、蕾を付けてから冷え込む日が続いた為、開花が例年よりも遅くなった。

 「それはきちんと開花できるように世話をした白櫻の努力の賜物(たまもの)じゃよ。」

 庭園の屋敷の縁側に座り、微笑(ほほえ)みながら白櫻達を見ていた祖父は、立ち上がり屋敷の中へ入って行った。

 「どこに行くのかしら。」

 「多分、台所じゃないかな。めでたいからお酒を片手に持ってくると思うよ。」

 「白櫻じゃあるまいし、それはありえないと思うわよ。」

 「失礼な。俺はそこまで飲まないよ。」

 桃姫は疑いの目で白櫻を見た。

 「酒豪(しゅごう)は皆そう言うって聞いたことあるけど。」

 緋梅の一言に、白櫻は顔を引きつらせた。

 「白櫻はいつもどのくらい飲んでいるの。(たしな)む程度とは聞いていたけど。」

 「ああ。その日によるけど、一升(いっしょう)は飲めるかな・・・あれ?」

 桃姫と緋梅は唖然(あぜん)とした。

 「一升は嗜む程度を越えているわよ!」

 「えー。普通だと思うけど。」

 「貴方のおじい様は、小さな徳利を二つ以上を飲んでいるところなんて見たことがないのに・・・孫が大酒のみだなんて。」

 「桃姫、さっきから失礼じゃないかい。」

 そんな会話を白櫻と桃姫はしていたのだが、またもや緋梅の次の一言によって、それは打ち消された。

 「白櫻のおじい様、酒壺を背負って戻って来たけど。」

 え、と言って白櫻と桃姫は振り返った。そこには、まるで孫を背負っているかのように、大事に酒壺を背負った祖父の姿があった。その姿を見た、白櫻達は呆然と立ち尽くした。

 「あんな大きい壺を持っているの、はじめて見たわ。」

 「それは僕もだよ。」

 「このお屋敷にあんな大きな壺を置いてあったのも知らなかった。」

 そんな三人をよそに、白櫻の祖父は、酒壺を優しく置き、蓋を開けた。その瞬間、甘い香りが辺りに広まった。その香りを嗅いだ三人は、我に返った。

 「この甘い香りは、桃桜酒(とうおうしゅ)か。」

 「よく分かったのう。五年前に作った桃桜酒じゃよ。」

花の章第十二話を読んでくださり、ありがとうございます!

前回の投稿から約一か月半、空いてしまい申し訳ありません。

それでは今回の花の章ちょっこと説明書です。

今回は、登場人物の名前について軽く説明しようと思います。

花の章に出てくる人物達の名前は、その人に関連した物の漢字を使っております。白櫻だったら「桜」、桃姫は「桃」、緋梅は「梅」という風になっております。名前に意味があるように彼らの名前にもきちんと意味があります。これも今後の物語で書きますので、お待ちくださいませ。

(これは説明になっているのか?)


花の章「第十二話 ある日の春の庭園にて」を読んでくださりありがとうございます。前回、お話しました、新しい物語に関しましては、現在、選定中なのでお待ちいただければ幸いでございます。

また、Twitterもやっておりますので、そちらもよろしくお願いいたします。

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