第十一話 幼き日の櫻の過去
前回の投稿から約一か月ぶりの投稿となります!
第十一話 幼き日の櫻の過去
「じいさんは桜園の花護目で、俺の師範であると同時に、親みたいな存在なんだよ。」
「親みたいな存在・・・。それはどういう事だい。」
「俺の両親はとっくの昔に桜園から消えたんだよ。」
白櫻の両親は、白櫻がまだ幼い頃に、行方をくらましてしまったのである。白櫻を一人残して。両親の捜索は、祖父を筆頭に行われたが見つからず、手掛かりでさえ見つけることができなかった。―まるで神隠しあったかのように。
そんな一人残された白櫻を育てたのが、祖父であった。当時、桜園の花護目であった祖父は、桜園の大樹だけでなく、近隣の桜も管理していた為、多忙を極めていた。だが、いくら多忙であっても、白櫻には両親の分まで愛情を注ぎ育ててきた。
「手のかかる孫だったと思うよ。だって俺、花護目になる気はなかったからね。」
「それは本当かい。」
嵩臣は驚いていた。桃姫達は、幼い頃より先代の花護目達と共に時折会っていた為、白櫻の過去は知っていた。
「まだわたし達が幼い頃、当時、桜園の花護目だったおじい様に、花護目にはならないと言っていたものね。おじい様も苦笑いをしながら聞いていらしたもの。」
「そうだったね。桃園の先代の花護目にも苦笑いされた記憶があるよ。」
祖父をはじめとする当時の花護目達は、幼い白櫻の言葉によく苦笑いをしていた。だが、そんな白櫻を皆は可愛がっていた。今思えば、両親のいない寂しいそうな子だったからもしれないと思うが、それでも、白櫻にとっては救いであり、嬉しいことであった。祖父から花護目を引き継ぎ、花護目が今の三人になってからは、ほとんど会えなくなった。だが、久々に会えば、昔のように可愛がってくれる。
そんな環境の中で過ごし来たおかげで、白櫻は両親が消えた悲しみを乗り越えることができたのである。
「そんなことが・・・。ところで話はだいぶ変わるけど、白櫻のおじいさんもかなりの酒豪なのかい。」
「はあ?」
白櫻はかなりの酒豪である為、その祖父も酒豪なのか気になるのは、白櫻の祖父に興味を持った嵩臣が聞くのは無理もない。だが―
「お前、それ今聞くことじゃないだろう。」
白櫻の言葉に、嵩臣は「いやー。」と笑った。
呆気に取られている白櫻の代わりに、桃姫が答えた。
「白櫻のおじい様もお酒は飲むわよね。」
「まあ、完全に寝酒程度の嗜みなんだけどね。ただ・・・。」
「ただ?なんだい。」
そう言って、白櫻は遠くを眺めだした。「え?白櫻?おーい。」などと声をかけている嵩臣の声は届かないほど、遠くを見つめていた。簡単に言うと、考えるのをやめたのである。
「嵩臣殿、今声をかけても無駄ですよ。」
白櫻の肩をつかみ、揺さぶっている嵩臣に対し、桃姫は苦笑いを浮かべながら言った。桃姫の言葉に緋梅も苦笑いをしながら小さく頷いた。
「白櫻のおじい様、お酒の飲み方がおかしい方なんです。」
「へ?それはどういう事だい、緋梅。」
緋梅の言葉に嵩臣は、首を傾げた。
「あれは、まだ嵩臣殿とわたし達が知り合う前の話なのですが―。」
花の章、第十一話を読んでくださり、ありがとうございます!
今回は、白櫻のおじいさんをメインにしようと書いていたのですが、いつの間にか、白櫻の頃の過去の話となってしまいました。(後半部分で頑張って路線を戻したつもりです。)
それでは花の章ちょこっと説明書・・・なのですが、今回はお休みします!
その代わりといっては何なのですが、ちょっとした告知(?)みたいなのをさせてください。その内容なのですが・・・
花の章の他に別の作品の投稿をしようと思っております!
実は、この花の章を小説家になろう様に投稿する前から、書いているのですが、それと並行していろんな物語を書いています。と言いましても、すべて未完成であり、ネタ書きみたいな感じなのですが、花の章含め、全34作品の物語があります。その中の一つから選んで投稿していこうと思います。もちろん、メインで書くのは、花の章なので、投稿頻度はかなり遅いです。
もし、投稿しましたら、Twitterでお知らせいたしますので、花の章共々、よろしくお願い申し上げます。
長々となりましたが、改めまして、花の章第十一話「幼き日の櫻の過去」を読んでくださりありがとうございます。Twitterもやっておりますので、そちらもよろしくい願いいたします。
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