第十話 意外な過去
第十話です!
第十話 意外な過去
「東宮の相談役として育ったって・・・。」
白櫻達は嵩臣の言葉に耳を疑った。あまりにも信じ難かったからである。
今上帝には十二人の子供がいる。東宮は帝の四番目の子であり、幼い頃より父である帝から最も信頼されていると言われており、七年前に東宮として立てられてから、帝の補佐役として朝廷の仕事に励んでいる。そして、東宮の母は右大臣家と所縁のある家の娘で帝の正妻―皇后である。
帝は、我が子達の側近や侍女を自ら選んでいる。というのも、帝の最初の子に、毒を盛り殺めようとした事件が起きたからである。首謀者は、侍女を買収し、食事に毒を混ぜさせたという。幸いにも、帝の子は一命を取り留めた。そして、首謀者と買収された侍女は、流罪となった。それ以降、帝は欲に溺れず、我が子に忠誠を尽くす側近や侍女を選び、守らせている。その成果もあってか、帝の子全員、今も存命している。
だからこそ、なぜ嵩臣を東宮の相談役にしたのか、それは帝にしか知らない。
「嵩臣殿って一体、何者なのかしら。」
「本当に陰陽師なのかな。」
「僕は一介の陰陽師だよ。―この話は終わり!これ以上話すと頭が痛くなるよ。せっかく、桃姫や緋梅に会えたのに。」
桃姫と緋梅がつぶやいた言葉に答えるように言った嵩臣は、あとはなにも答えないと言わんばかりの大きな声を出した。
嵩臣が、白櫻の祖父が先代の桜園の花護目であることを知らなかったと同じように、白櫻達も嵩臣の過去や家族の事は知らないことが多い。それは互いに話そうとしなかったからでもあれば、そうでもない。
「それよりも、白櫻のおじいさんの話を聞かせてよ。」
「なんで。」
「単なる好奇心だよ。それになんか面白そう。」
「面白そうって・・・。」
白櫻は怪訝そうな顔をした。
「そんな嫌そうな顔をしなくてもいいじゃないか。」
「うるさいよ。」
嵩臣は酸欠から完全に回復した為、白櫻に肘をつきながら、からかっている。桃姫達はそれを見て、小さく笑っている。
「嵩臣殿と白櫻のおじい様は、気が合いそうな感じがするわね。」
「本当かい。」
桃姫の言葉を聞き、嵩臣は目を輝かせた。
「気が合いそうも何も、全く同じ性格だよ。違うのは、年齢と妖ってとこくらいじゃないかな。」
白櫻は溜め息をついた。
しかし、白櫻のその言葉によって、のちに白櫻にとって苦い出来事が起きてしまうのである。
「今回ばかりは白櫻が悪いのだから、潔くおじい様の事、教えてあげたら。」
「・・・分かったよ。」
渋々ではあるが、白櫻は自身の祖父について話し始めた。
第十話です!そして、この第十話で、花の章10000字達成しました!
それでは、花の章ちょっこ説明書
今回は第六話・第七話で出てきました緋梅と水知の関係性についてです。
この二人は、第七話で書きました通り幼馴染という関係です。ですが、ただの幼馴染ではありません(作者の中では)。今後のお話で二人の事は深く掘り下げていく予定です。嵩臣のセリフで、「まるで家族のようだな」(第七話より)があります。実はこの言葉キーワードになるかもしれないし、ならないかもしれません。それは今後のお話をお待ちください。(説明になっているのか、これ)
花の章、第十話、読んでくださりありがとうございます。
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