第二十四話…僥倖
今日の天気は曇り。だけど、テストが終わった。
拙者の心は晴天120%!!
晴天の空の下。
──
「ははっ! 有難き幸せ」
元盗賊団団長の赤髪のうら若き女アサシン【ライン・シュコー】は、中間考査が終わったブタとの謁見に臨み、老騎士のとりなしでとりあえずは部下とともにアイスマン子爵家の食客となった。
──ハリコフ王国の掟では、盗賊は縛り首である。
なぜならば、盗賊団と言えば殺人・誘拐・強姦・強盗などを働くわけで、それをされた領民本人家族からすれば、縛り首は妥当である。
──それともあなたは愛する家族が嬲り殺しにされ、実の幼い娘たちが皆強姦され、望まぬ子達を身ごもることになっても平気だろうか?
ただブタ領としては、被害にあったのは道路建設の夜間労働者のスケルトンたちであり、準軍事的な意味合いでの被害でしかない。
又、実際に本当の盗賊や他所の勢力から領民を守るためには、彼らの出自は明確で、かつ実践経験もあり、さらには鉱山採掘技術まであるのだ。
戦力として考えないほうが愚かかもしれなかった。
元盗賊団と激戦となったブタ領最南端の渓谷は、シュコー副騎士団長に敬意を表して、【シュコー峡谷】と名付けられることとなった。
一両日中に周辺地形地図および採掘設備一式が鉱山管轄責任者のウサに引き渡された。
……というのは建前で、内実は文書上の形式だけで、なんでも屋のヘーデルホッヘ家宰が取り仕切り、ウサは目をつむって拇印を押しただけだった。
──
「ぶひぃ~」
「ぽこ~」
「うさ~」
(´;ω;)(;ω;`)(;ω;`) え~ん
「ンホォォォ~!」
今、彼らは、多少の戦闘能力の向上のために、アガートラムの森の奥深くにある邪教の館にて、ンホール司教より魔法学の座学中だった。
「てすとぉ~おわったばっかりでござるのにぃぃぃ~」
「勉強嫌い、ぽこぽこ」
「うさ~勉強嫌い、うさうさ」
ゴスッ! ゴスッ! ゴスッ!
キノコ族の司教は硬い拳で熱い思いを語る!
「イツカ、キットヨカッタトオモウ、ンホォォォ……」
事後的に解ったことでもあるが、ンホール司教はかなりの古めかしい考え方の体罰アリのスパルタ式詰め込み教育実践者だった(合掌)
──
「ご注進! ご注進!」
白馬にまたがった煌びやかな衣装の伝令兵が駆け込んできた。
「何事か!?」
──その日、ブタ領都ニャッポ村が騒然とする。
誰が見ても一目で、その白馬に跨った伝令がハリコフ王国の正式な使者とわかるのだ。
ニャッポ村は上へ下への大騒ぎとなった。
暫しのち、痩せマッチョで毛がつやつやの高貴な木製ブタ人形に、王国宰相ドロー公爵より綸旨を賜った。
王国宰相とは時に神聖不可侵なる王の代理でもあるのだ。
使者は恭しく、ブタの置物に頭を下げた。
「アイスマン子爵におかれましてはますますご健──
王の正式なる使者でないため、ブタの置物が上座にて話を聞く。
アガートラムはまどろっこしそうな案件のため、急ぎ仮病の腹痛を催し、去っていった。
で、宰相からの使者の口上はこうであった。
『ハロルド王太子殿下が南方視察の行幸をなされるので、臣らは一同をもってこれを歓待されたし。
……主催案内人および付添人は王国宰相ドロー公爵で、つまるところ盛大なる宴会でも催してもてなしをしろ』とのことだった。
「家宰殿としても、僥倖であらせられますな!」
Σ( ̄□ ̄|||) と……とんでもない、この金がないところへ、コンチクショウメ……とか口が裂けても言えない老騎士だった。
が、急ぎ支度をせねばならぬゆえ、使者を丁重にお送りする老騎士。
「あはは! 流石にアイスマン殿は武人よの?」
「……は?」
正直わからない老騎士は生返事をする。
「いやいや、初のご行幸であろうにも一言も発せられぬ。お見事! お見事!」
Σ( ̄□ ̄|||) しゃべったら怖いがな……人形やし。
「いかにも!」
老騎士は目いっぱい韻を踏んだ返事を返し、内心ブタ人形に返事をするからくりでも仕込もうかと本気で悩んでいた。
──その晩。
「やんごとない方々へのご飯なんて作れないクマー!」
老騎士に是非にと呼び出された、干物造りの名手ドリス夫妻は憤る。
ちなみに今のブタは中身入りの本物である。
なぜなら、今は親しい仲間たちで石狩鍋つつき中なのだ。
ただ飯ほど怖いものはない。
いつの間にやら女アサシン【ライン・シュコー】までもいる。
新しい木の香りがしていたニャッポ村役場であるが、度重なる石狩鍋のせいで、かなり魚臭くなりつつあった。
……そもそも、鶏肉位なら手に入るのだが、豚肉にいたっては共食いと笑われるであろうし、『ごちそう作って出迎えよ!』は田舎者のブタ達には、かなり凄惨な命令だったのだ。
……数日後にこの事態は好転する。
「王太子殿下はお肉がお嫌いの由!」
この未曾有宇の危機(?)に際し、情報収集をかってでた赤髪の女アサシンの配下が報告だった。
……(´・ω・`)
他にも、野菜やらなんやら、アレコレ嫌いだとの知らせに。
……(´・ω・)(・ω・`)(´・ω・)(・ω・`) ヒソヒソ……モウ、オ菓子デモ買ッテ、ダシトクカ?
……みたいな雰囲気になりかけたところ、
「中央への当地の威厳を示すためには、当地の特産品で供応すべきです!」
「さすが!」
「さすが!」
……。
Σ( ̄□ ̄|||) シマッタ! ハメラレタワ! これは〇明の罠!
気づくの、すでに遅し!
常識論をウッカリ口走ったクマのドリス夫婦。
そう、【言い出しっぺが責任を持つ!】という大人の法則(?)にかかったのだ。
みんな学(INT)はないが、知恵はまわったのだ。
<(`^´)><(`^´)><(`^´)> ぽこうさぶひぃ~♪ (←低INT三兄弟)
「まぁ……ここはクローディス商館商館長にも頼みますか」
老騎士が極めて常識的な提案をしたので、この議論は終え、会議後はひたすらみんなで石狩り鍋をつついた。
……が、
「うさぁぁぁああああ!!」
「!?」
一同に緊張が走る!
新参者の女アサシン【ライン・シュコー】がウサにお酒を飲ませたのだ!
ヾ(▼ω▼`メ)ノシ うさぁぁああああ!
……楽しい石狩鍋は、一瞬で悲惨な修羅場となっていった。
「そうだ」
「!?」
【システム通知】……正常にログアウトしました。
Σ( ̄□ ̄|||) ブタ野郎め! 酒乱のウサからにげやがった!
「母上~!」
「お! 珍しくゲームをちゃんと終わったね♡」
「うん! 今日の晩御飯は何?」
「みんな大好きトンカツよ~!」
「やった~♪」
──この裏切り行為を神はいかに見るのだろうか?
(……そんなしょうもない疑問の中、作者は筆を一時おいた)
【今日のブタ的な卓球用語】 …『ダブルスのサーブ』
自陣にワンバンさせてから相手の陣地にいれるのは、通常のシングルと同じだが、ワンバウンド目を自陣の右半分で行い、ツーバウンド目をサーバーからみて相手陣地の左半分にて発生せねばならない。
球筋が限られるために、バックハンドでもフォアハンドでも取れるなど、レシーバー有利とされている。
ブタ的レベルでは、圧倒的にサーバー有利! 毎度ながらに性格のひねくれたサーブが跳梁跋扈する。多分、すがすがしいスポーツとは程遠いww
当ブタコメディーは【にゃっぽり~と航空】様と【(非公式)アスキーアート同好会】様の提供でお送りしました。