第二十一話…港湾
今日の天気は晴れ……。
VRゲームがしたいが明日は中間テストの試験日で、母上が怖くてゲームはできません。
──ブタ達の丸太小屋のある領都ニャッポ村から南東に徒歩二時間のところにある海岸に、比較的大きな港が作られつつあった。
港の周りには活気あふれるお魚売り場、工事関係者目当ての屋台が活況を呈していた。
現在、クローディス商館の指示のもと、大幅な海底浚渫が行われており、完成の暁には【ンホール港】という名前になる予定であった。
大きな帆船の戦艦も泊地として利用できる様相は、王都からすればトンデモ物件だったわけだが、当のブタはなにも知らない。バレれば呼び出されて焼き豚案件だったのだが。
……港の設営について、【三頭政治】家たちやクローディス商館商館長がなにを意図しているかは不明だが、商人たちは細かいことが分からなくとも、お金のにおいがするところに自然と集まるのだった。
ブタ領境には関所もあり、通行税も取っていたのだが、折からの不作によりブタ領へ移住希望者は後を絶たなかった。
──現在ハリコフ王国は飢饉にも関わらず、北方への征服戦争の真っただ中だった。
少なくとも、重税を課したり課されたりする貴族たちの求める方針は、いつ成果が出るかわからない【灌漑】工事などではなく、手っ取り早く甘い蜜が手にはいる戦争だったのだ。
荒れた畑に見切りをつけたものは、兵士として夢を見る時代でもあったのだ。
……そんな事情により、ブタ領はハリコフ王国宰相ドロー公爵により兵站を支えるべく食料増産の期待がかかった。
ブタ領は平野の多くが川の流れる湿地帯であり、コメ栽培に適していた。が、その湿気具合に人間たちは難儀していた。
そこで最も湿気に強い部族であるキノコ族が動員された。
アガートラムの森を出た彼らキノコ族はブタ領各地で自生し、ガンガン農業に励んでいった。
──ブタ領産の生鮮野菜は、少々カビ臭かったが貴重なビタミン源として重宝された。
一獲千金を夢見る商人たちもまた、それを大金で買い漁り、次々に王都へ運んでいった。
ドロー公爵の目論見は一部においては成功していたのだ。
ちなみにキノコ族は実は野菜嫌いでありあまり自分たちでは食べなかったことも大きかった。
──ブタ領の交通の要所に設定された関所は、管理を【三頭政治】家たちによって負担運営され、治められる税の3割をブタ領主金庫に収めることになっていた。
つまり経費はかかるが、残りの七割は彼らの取り分なのだ。
当然のように、生鮮野菜にはかなり高い通行税が設定され、【三頭政治】家たちは非常に潤った。
もはや彼らは潤いすぎて『ンホォォォ~♪』状態だったのである。
【今日のブタ的な卓球用語】 … 『エッジ』
エッジとは卓球台の角のことであり、インプレー扱いである。
また、台の側面はサイドと言われ、ここに打球が当たった場合はエッジとは異なりアウトとなる。
裁定は主審であるが、VTR判定の導入が喫緊の課題である。
ブタ的レベルな見分け方として、打球が若干下向きに滑ったり音が変だとエッジでは無くサイドとされるが、揉めることも多く、審判もいないので最後はじゃんけんによって裁定される。
当ブタコメディーは【にゃっぽり~と航空】様と【(非公式)アスキーアート同好会】様の提供でお送りしました。