第十八話…相国
今日の空は曇天。外の音から察するに今日は風が強い。
──ハリコフ王国ドロー公爵は、痛み分けとなったボロンフ辺境伯爵とアイスマン辺境蛮族子爵の和平への仲介を行った。
結局のところブタは王国への反乱ではなく、ボロンフ辺境伯爵との領地境でのイザコザという形で公式文書に記されることとなった。
その政治的背景により、ブタはドロー王国宰相公爵閣下の与力へと変更がなされた。あくまでも編成上のことで、地位の変動ではない。
──老齢なるも麗しい赤髪の【現】宰相殿は、【次期】宰相の地位も手に入れたかった。
次期王太子との呼び声高い5歳のハロルド殿下の後見人でもあるドロー公爵の最大の弱点は、広大な領土を持たないことだった。
が、政治力と野心の権化である公爵は、ボロンフ辺境伯爵だけでなく、ブタも実質上麾下に収め王国南東部に隠然たる勢力を持つに至った。
──ハリコフ王国南東部とは【ピエード山脈】の東側に位置し、降水量も比較的多く、川が縦横に流れた湿地が多かった。
おもな作物はコメの一種であり、収穫は秋。
翻って王都周辺の【アーバン大穀倉地帯】は主に小麦の産地であり、収穫は春。
食料リスクを回避するために、秋の収穫のある南東部を支配することは王国にとってだけでなく、政治的な野心の大きいドロー公爵にとっても垂涎の地であった。
そのため戦後交渉において、ブタたちは捕虜にしたボロンフ辺境伯爵の支配下の兵士や村人を、王都で支配階級しか手に入らない【特級小麦】との交換に臨み成功した。
「おいしいものくるウサー♡」
「わらわもケーキが食べたいニャ♡」
膨大なMP(魔法力)を消費した【コダイ・リュー】はMPが6か月は回復しない。
不完全ではあるものの絶大なる変身魔法の代償としては普通なのかもしれない。
……今日は町割り抽選日!
ポコが作った木製抽選機が勢いよく次々に廻される。
──ガラガラガラ
ぱんぱかぱ~ん! …… 一等賞!(金玉)
比較的良い区域をGETした行商人がその妻へほほ笑む。
丸太小屋のまわりは新たな住人が殺到し、居住区の抽選会はにぎわった。
ぱんぱかぱ~ん …… ハズレ!(白玉)
郊外の【ぺんぺん草地域】をGETした老騎士がうなだれる。
「貴方!! 今日は晩御飯なしよ~(怒)」
「おとうさん! 今日は帰ってこなくていいわ!!(怒)」
Σ( ̄□ ̄|||)
……大量のお金と抽選券を支払うたびに【おしりふき用の荒縄】や訳の分からない荒野を次々と引き当てる老騎士は、顔がだんだん青くなっていった。
「うははは……兄弟よ! おぬしも白玉が好きじゃのう!!」
……同じく【おしりふき用の荒縄】を大量GETし、部族の者から白い眼をされても気にしないオーク族族長のアガートラムが大いに笑う!
……壱将功成りて、万のケツ縄得る。
古の歴史家はそう記した。
【今日のブタ的な卓球用語】 … 『横回転サーブ』
一般的に普通にレシーブすると上回転サーブは浮き上がり、下回転サーブはネットに突き刺さる。で、横回転サービスはラケットに当たると横にはじけ飛ぶ。
当然ながら、斜め下回転やら斜め上回転など縦横回転混在で長短のサーブが選択される。なにしろレシーブするラケットには極めて摩擦係数の高いラバーが張られているのだ。レシーブが悲惨になるのは言うまでもない。
ブタ的レベルではどうか? 【横回転サービス】とは陰険である!(断言)
当ブタコメディーは【にゃっぽり~と航空】様と【(非公式)アスキーアート同好会】様の提供でお送りしました。