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赤音と自宅2

「だーかーらー、それを指示したのはだれかって聞いてんの? あーゆーおっけー?」


 火威赤音は先ほどバラバラにしかけた人間、武曽むそう 仁居弐にいにを元の状態に戻して詰問している。


「確か……俺はしんだハズ……《超絶魔術師機構ウィザードリィ》は死んだ人間を元には戻せないと……」


「なんか3秒ルール的な?」


――賢い赤音ちゃんがそう情報を聞き出さずに殺すわけないじゃーん、見くびられたもんだなあ。


 暗い部屋で、赤音は武曽を拘束し、均衡推進隊についての情報を聞き出そうと目論んでいる。《超絶魔術師機構ウィザードリィ》の力を以ってすれば、口を割らせることなど容易いにもかかわらず、そうしないのは単なる赤音の趣味である。


「さあ、早く言わないとその指が全部消えてなくなるよ……」


「知ってた? 小指を指詰めするのってもう刀を握れなくするためなんだってさ……」


「人が悲しんでいる顔を見るのって楽しいなーって思わない? 私は笑顔よりも断然好き」


「死んでもまた、生き返らせてあげるからね……」


 興奮を抑えきれず、矢継ぎ早に言葉を浴びせる赤音、それを覚悟を決めた様子で黙って見守る武曽。


「俺は組織のことは知らない」


 武曽はもちろん組織のことはある程度知っていたし、こうしているうちにも武曽はこの圧倒的不利な状況をひっくり返すような秘策がないか模索している。真面目な彼は死ぬ間際もそして、一度死んでもなお、献身的な姿を見せている。


「じゃあ、まず一本、《超絶魔術師機構ウィザードリィ》」


 その声と共に、武曽の右手の指が全部消し飛んだ。ドクドクととめどなく血が噴き出て、きれいにした床がまた赤一色となる。


「うぐッ……」


「ごめん、ごめん。わざとじゃないんだけど……加減が難しくってさ……」


 もちろんこれはウソである。赤音ははっきりとこうなると分かっていて指の切断を実行している。実に性格の歪んだ行為であることは言うまでもない。


「いやさ、アニメの影響で人を殺すだとか昔さ、あったじゃん。ひぐ〇しの鳴く頃にとかが流行っていた時にさ、鉈で殺したってやつ。あれ辺りからいつも犯罪とアニメの相関関係がさ、話題になってたじゃん。アレ実際のとこ、当たってると思うんだよねー。うちもさ、魔法少女特殊戦あ〇か見てなかったらこんなことやってないと思うもん」

――ほんと良いアニメだったよ……最終回まだだけど。


「実際アニメと人殺しとか特殊性癖とかって関係してると思う。みんな勇気とか力とかきっかけがないだけ。誰だってアニメ見てやってみたいって思うじゃん。だからけい〇ん見てギター買って、弱〇ペダル見て自転車買って、ゆ〇キャン見てキャンプ用品買うわけじゃん。オタクってチョロいよねー、そう言うとこ」


 人差し指をくるくると回して、赤音は続ける。


「うちだってさ、魔法少女ま〇か☆マギカとか見てさ、魔法少女って良いなーなんて思ってたわけ。んでこの《超絶魔術師機構ウィザードリィ》を手に入れた。運命かよって思っちゃうよねー」


――とにかく、何が言いたいのかっていうとさ……


「この《超絶魔術師機構ウィザードリィ》は誰にも渡さないってこと」


 赤音はきっぱりとそれだけ言って、武曽に暗示をかけようと試みた。


「口舌の弛緩、思惑の漏洩、全貌を解明し全容を快諾せよ。汝は我がしもべとなり、我と汝の間に一切の嘘偽りがないと誓え。《超絶魔術師機構ウィザードリィ》!」


 長々と詠唱したものの、もちろんこれらは不必要な所作である。しかし雰囲気づくりのためだけに赤音は即興で詠唱を行った。


「まあ、これでいけるでしょ」


 はい洗脳完了、これで全て洗いざらい吐いてもらうぜと言う段階だと思っていた赤音だったが……


――ブシャッ……


 今回二度目の破裂が眼前で起こるのを目の当たりにした。最初の時とは違い、赤音の意思とは無関係に武曽は破裂した。自殺かとも思えたが、一向に元に戻すことができない。


「あーこれってきっとそうなったらそうなるように仕掛けられてたやつだ……」


 何者かの洗脳がこの武曽と言う人間に施されていたことを悟った赤音は左手の手の平を上向きにして呟いた。


「だーめだこりゃ。うまくいくと思ってたけど、そう簡単にヒントはくれないかー」


 特に意気阻喪いきそそうするわけでもなくけろっとしている赤音。兄とは違い、物事を冷静に考えることができるのが赤音の長所である。


「いよいよお兄のところに向かった方がよさそうかもなー。きっとあっちはあっちでゴタついてると思うし……」


――盾の〇者だけ見てからいこーっと。


 せっせとアニメを見ながら旅の支度をし始める赤音。武曽の言った通り、《超絶魔術師機構ウィザードリィ》の能力は均衡推進隊によって狙われていることは確かである。だからと言って、家に籠っているだけでは解決しない。赤音はどうせ狙っているのだからどう動こうとも問題ないだろうと言う考えのもと、外の世界へと飛び出すことを決めた。


「うちもラフタ〇アちゃんみたいなケモミミがほしーなー、なんて」


――それじゃ、遅くなっちゃったけど、いってきまーす。


 静寂が支配する部屋で赤音は一言そう言ってバタリと扉を閉めた。


毎回アニメの話ができてうれしい。

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