俺と忍者村2
「俺は……わた〇ん最終回を見るまでは……死ねないんだよッ! わ〇てんは俺の心の支えなんだッ!」
と、訳の分からない気合の入れ方でなんとか立ち直る俺。虎走はパワードスーツのおかげで無傷のようだった。
「……って、え!?」
「敵が二人いるッスね……」
俺たちの目の前には、右手に龍をあしらった装具を持った人間が二人。きっとこれは忍術影分身の類なのだろうと即座に理解する。
「あれッスよ! 仮面〇イダー 龍〇! 〇騎ッスよ! 影分身もできるんスねー」
「まさに……《隠遁翼竜》!」
今度は俺たちの番だと言わんばかりに、俺と虎走は同時に攻撃を仕掛ける。
――《獄炎の射手》!
――《無尽蔵暴走二輪車》!
俺がそう叫び、辺り一面に火柱が大気炎を上げて立ち上る。虎走はカタナを変形させた刀で目の前の二人を一刀両断する。火の粉が刀の動きに連動して空をひらひらと舞い、炎をまとった刃のように輝いている。
「炎が通じないと言うことが先ほどの経験から理解していないようだな……」
――無論、斬撃も通用しないのだが。
俺たちの攻撃を全く受けずに、仁王立ちする《隠遁翼竜》。俺たちに勝ち目はあるのだろうか……
「まあ、こっちにも攻撃通じてないから対等っスけどね!」
「隣の男には通じているようだが……」
俺はわき腹を抑えつつ、強がってみせる。
「はッ! てめえの攻撃なんざちっとも効くかってーの! 勘違いしてんじゃねーよ!」
考えろ、考えろ俺。今までたくさんのアニメを見てきただろう。炎系能力者はどうやってピンチを切り抜けていた? 覚醒か、覚醒してさらに強い能力を発現させるしかないのか? このままじゃ俺だけ何の見せ場もなく、物語から退場してしまう。考えろ、俺。
脳内で緊急会議が開かれるが、これと言った打開策が見つからない。これだから炎能力ってのはイマイチ使えないんだよな……
「兄貴、無理しないでくださいッス! ここは俺が……」
後輩に気まで遣わせてしまう始末だ。俺はなんて情けないんだ……
顔から火が出るぐらい、恥ずかしいぜ……
「待て……顔から……火……」
俺の脳内にある考えが浮かんだ。そうだ、これなら……
「体は炎でできている……血潮は火焔で心は劫火。初めての戦場で負けそう。ただ一度の敗走もしたくないし、ただ一度の勝利もなし。担い手はここに独り炎の丘で種火を育つ。ならば、我が生涯に意味は要ず。この体は“無限の炎でできていた”」
――《無限の炎製》
「いくぞ! 《隠遁翼竜》!」
俺自身を炎とする、「俺が……ブレイズだ!」の考え方、これこそが俺の《獄炎の射手》の新たな形だ!
「兄貴! すごいッス! 最終回直前の大技っぽいッス!」
轟轟と気炎万丈と上がる炎。俺は魔王にでもなったのかと言う気持ちだ。禍々しいほどに強大なそれは、目の前の《隠遁翼竜》を呑み込み、骨一つ、塵一つ残さないと言う勢いで燃え盛っている。
「勝ったな! ははは!」
俺はよくある油断する敵キャラのセリフを大声で言いながら、目の前の奴を炎の拳で押しつぶそうとした。
「最後に……言い残すことはないか……」
圧倒的火力を手にすると、このような最期の言葉を述べさせる余裕って自然とでてくるものなんだなと、初めて分かった俺。ラスボスってこんな気持ちだったんだな……
「今更で恐縮なんですけど……」
横で《隠遁翼竜》が何か言っているが勝利に酔いしれる俺には聞く耳がなかった。
「今の俺は! 負ける気がしない!」
両手をグーにして突き上げて欣喜雀躍する俺を前にして、《隠遁翼竜》は続ける。
「実は《隠遁翼竜》じゃなくて、《双截龍》です……」
ぐいぐいと袖を隣の虎走につままれていることに気が付き、お花畑から戻ってきた俺。おいおい、今からいいところなのに邪魔をするなよ、後輩。
「今の……聞きました?」
「ん? 何がだ?」
「《隠遁翼竜》じゃなくて、《双截龍》……」
「ん? どういうことだ?」
「自分たちが戦ってたのって人違いだったってことッスよ」
は? そんなわけないだろ。さっき分身して二人いたじゃないか。あれが忍術でなくてなんと言うんだ。
「だからそれが、ダブルドラゴンだから普通なんスよ。言ってる意味分かってきましたか?」
「じゃあ、俺の、《無限の炎製》は?」
「次回の戦いまでお預けッスね」
俺のドキドキを返してくれよ……
意気消沈し、自然と消えてゆく炎。伊賀までせっかく来たのに成果は上げられずとは情けない……
こうして俺は、《無尽蔵暴走二輪車》の虎走 彪騎、《双截龍》の九頭竜 龍華と共に赤音のいる甲賀を目指すことになった。
Fateはにわかです。