赤音と新幹線
甲賀に向かうことを決意した妹の赤音は、兄の予想通り、異能力者と戦っていた。戦うと言っても、交戦と言うよりは交接ではあるが……
――《恋の一番星》!
「んっ……あっ……」
唇と唇が優しく触れ合い、思わず赤音は吐息を漏らす。今までに感じたことがない快感、先日雷久保にされたモノとは違う【本物】のキス。
「っはぁ……はぁ……」
赤音が腕で押し返しても、なお絡みつく腕。右手をいやらしく、舐める様に赤音の頬に這わせて、耳元で囁く。
「ほら……ホントはもっと欲しいんでしょ」
赤音がいるのは新幹線の車内。隣の女性は美甘 美澪と言う女性である。
「あっ……そこっ……ダメぇ……」
成長期の禁断の胸部を優しく撫でる様に触る美甘と言う女性。赤音は初めて体験するオトナの体験にどう対応して良いのか分からないまま、すっかり流れに身を任せてしまっている。
「【彼氏】がいるなんて嘘ついてました……だから……許してぇ」
えーどうしようかなあ、いじらしく小悪魔的に囁く美甘。最初は固かった赤音も、次第に篭絡され、懐柔されてゆくのを感じている。でも止められない、止まらない。
「あうっ……あっ、あっ、あんっ……」
女性同士ということもあって、美甘は赤音が触られて気持ちが良いところをしっかりと熟知している。だからこそ、執拗に敏感な部分を攻めてくる。赤音もこんな攻撃を受けるとは思っていなかったため、思考が追いついていない。
「どうも、武曽はヘマしたみたいだけど、所詮は女子高生、しかも経験ナシ。私のテクニックで昇天させたげる」
そう言って、美甘はそっと赤音の唇に触れ、そのまま指を喉奥にゆっくりと伸ばす。ねっとりと舌が絡みつき、唾液交じりにべたついた人差し指を口内で出したり入れたりを繰り返している。唾液が糸を引いて、キラキラと光っているのがどこか妖艶で、赤音はその輝きに目を奪われていた。
「んっ……やめっ……」
ん? ここが良いの、と色々と敏感になる部分を弄る美甘、赤音は自分で口を塞ぎながら、周りの乗客に声が漏れないように細心の注意を払っている。
「はずか……し、い」
「そっかあ、じゃあ、そろそろやめちゃおっかなー」
赤音は心の中ではすっかりやめないでと唱えてしまっていた。あの快感をあと少しでも楽しみたい、あと少しでも体感していたい。そう言う思考しかできなくなってしまっていた。
「んっ……」
もう一度、最初と同じようにキスをされる赤音。唇の中から下を伸ばす美甘、激しい赤音の吐息が我慢できずに漏れる。それでも美甘は赤音の口全体を嘗めまわすように舌を這わせる。まるで、何かを捜し求めているかのように、素早く動く舌、その動きが刺激的で、赤音はまた体を小刻みに震わせてその快感に耐えている。
「あらあら、感じちゃってるの? 可愛い娘ね」
――でも、もうあなたには用はなくなっちゃった。
赤音は自分の口の中で、飴玉のようなものがカランコロンと歯にが当たるのが分かった。しまった、何か飲まされた、そう直感した赤音だったが、美甘はその唾液がべっとりとついた飴玉のようなものを取り出した。
「バイバイ、また会えたら……今度はもっとイケないコトしたげる」
右手にキラキラと光るビー玉のようなものを持ったまま、美甘 美澪は颯爽とホームへ駆けて行った。
「はぁ……はぁ……」
すっかり骨抜きにされてしまった赤音はしばらく放心状態でただ車内の天井をぼうっと見つめることしかできなかった。
荒かった呼吸がようやく落ち着き、火照っていた体も普段通りに戻って来て赤音は気が付いた。
――あれ……これ……
――もしかして……
赤音はあのルパ〇三世 カリオスト〇の城での定番のセリフを脳内で思い出していた。
「奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です」
ああ、心にぽっかりと開いた穴、大きな喪失感そして虚無感。私はきっとあの女性に心を奪われてしまった。そう確信した。
「これが恋ってやつなのか……」
自分の中にあった、たしかにあった何かが、はっきりと失われている感覚があった。だからこそ、赤音は心を奪われてしまったと思った――錯覚していた。
今もまだあの一時の興奮を思い出すだけで胸の鼓動が早くなるのが分かる。ああ、やっぱり私、恋しちゃってるなあ……
そんなことを感じて少し嬉しくなっている赤音、ドキドキを抱えたまま、まだ見ぬ敵達の戦うことができるのか不安ではあったが、最後のあの「イケないコト」と言うことを想像するだけでまた、少しイケない気持ちになってしまう。
しかし、イケない娘になってしまったのは赤音の方で、あの一瞬で火威赤音は能力を美甘 美澪の《恋の一番星》に抜き取られてしまっていたのだ。
しかし、彼女がそれに気が付くのはまだ少し先の話である。
エチエチコンロ点火!エチチチチチチ!




