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悪役は難しい  作者: エリュシオン
テロリストを応援するお仕事
9/27

雑務・日常

遅くなりました、申し訳ございません。

もう少しシナリオが進みますので。

よろしくお願いいたします。

その後少し雑談したら灯理が休憩室を出て、入れ替わりに背が少し低い女の子が来た。

俺の妹の凪である。

凪が小動物のような動きで隣の席、ではなく最も遠い席にを座る。

サラサラした紺青色の髪は二の腕まで伸び、前髪に白い髪留めを付けている。

瑞々しい目が心配しそうに、ではなく非難するようにこっちを見る。

はっきり言って俺はこの子に嫌われている。

どうしてこうなった。

少し嫌な空気の中でしばらく待つと、俺から話した。

「お疲れ、凪。」

「・・・うん。」

軽く首を縦に振る。

仕草が可愛いね。

「今日から邪魔するよ。」

これからの計画のためにここ数日凪の家で過ごした方が都合がいい、目撃される可能性が低いから。もっと言えば現場に近いからだ。こういう時間の消耗は意外と馬鹿にできない、なぜならこのような無駄が多いなら多いほど計画が破綻する可能性が高くなるからだ。

失敗するわけにはいかない俺には負う必要のないリスクである。

「・・・うん。」

少し不満に頷くと、凪は意を決して俺を見つめる。

「日向さんと、なにする、の?わたしに、迷惑、かけないで・・・」

どうやらさっきの会話を少し聞いたようだ。

まあ、この子なら良いかな。

「大したことではないから心配しなくてもいいよ。」

答えを聞いた妹は眉を寄せる。

「そう・・・心配は、してない。」

最初から興味がないのように見えた。

人見知りを除けば礼儀正しいのいい子であるが、思い込みが少々激しい。大事な妹をこの店でバイトさせたのも人見知りを何とかするためだが、成果は芳しくない。

なんであれ、この子に危ない目を遭わせるわけにはいかない。

なにがあってもだ。

たとえ彼女に嫌われても。

さっさと話題を変えよう、しかしどうも話題を考えるのが苦手だ。

なんかこう、この子を喜ばせる話題がないかな、ないか。

こういうの何時も灯理に任せているからね、お陰で妹様は兄ではなく姉と仲良くなっている。仲が悪いよりはいいから別にいいけど、拗ねていないし。

「俺は晩御飯の材料を買っておくから、凪はバイト終わったらすぐ家に帰ること、灯理に送ってもらって。」

この子今日は午後七時半に上がるはず、そんな時間にか弱い女の子を一人にするわけにはいかない。

「うる、さい。不味いもの、食べない。」

「不味くないものか、わかった。ではいってくる。」

リクエストも貰ったし、メニューを考えよ。

荷物を取り、店長室へ歩く間に色んな料理から晩御飯のメニューを選ぶ。

買うべき材料をまとめ、今度は夜のバイトの準備だ。夜に戦闘があるとはいえ、いやあるからこそ日常の食事はちゃんとするべきだと思う。

日常は常に戦闘のための燃料になるからね。

ではなぜ今になって準備するのか、その理由は簡単だ。もともと今日のテロリスト捕獲作戦に介入するつもりはないからだ。

夢で見た景色を実現するだけなら明日、疲れたテロリストに接触するのが一番安全だ、彼らを生贄にする準備も済んでいる。

しかし灯理は早くこの騒ぎごっこを止めたいと言った、ならば作戦を前倒ししてもいいだろう。他人の命より灯理、家族の機嫌の方が重要だ。

となるとその場合俺みたいな弱い人間が戦場に突入するには身を守る武器が必要だ。

魔術が使えない、体も直接魔術と戦えるほど強くはない。

つまり俺自身の戦闘力を期待するだけ無駄だ。

正解は他力本願か、強化手段、装備選びである。


普通思いつくのは剣や盾などだろう。

実際ほぼ全部の魔術師はそういった特製武器を使い、魔術を発生させる。

またはその武器で直接攻撃する近接魔術師も存在する。

しかし、魔術が使えない俺がそんな武器を持っていてもできることはないし、白兵戦はできるが顔が見られるリスクはなくはないからね。

いくら仮面を被ってもね、破壊されたら終わりだしね。

だからこそのプランBだ。

鍵がかけたドアを開け、真っ暗な店長室に入る。

明かりを付け、紙に占拠されたテーブルを十秒で片付けて奥の棚に置き、床にある箱をテーブルに移動。

古い石製椅子に座り、引き出しから大理石製のツールボックスを取り出す。

相変わらず店長はケチだな、届いた箱がボロボロではないか。

箱に掛けた保護魔術を解く。

俺以外の人が箱を開けようとしたら爆発する仕組みである。

長さ二メートルの箱を開け、三つの銃が姿を見せた。

先ずは長さ四十センチの拳銃二挺、鋭いシルエットを持つ真っ白な銃身と特製装甲、薬室と銃身は特別な処理を施し、極限まで強化させている。

表面に透明な線が見え、儀式銃みたいの外見になってる。

物語に出てくるおもちゃのように見えるがこれらは俺の今の武器だ。

ほかの武器が使えないなら使えるやつを作ればいい、ということだ。

これ以外の武器は魔力がないと使えないからな、仕方がない。

「うん、予想通りの出来栄えだ、さすが店長の墨付きだ。」

彼に頼んだのは銃の表面の線、魔力回路の製作だ。

自分でもできるが計画の準備もあるから自作する時間がない。

あと地味に必要な道具や消耗品は仕入れ難い。


拳銃二挺の保護魔法を解き、ツールで解体する。

パーツの総数は百を超えているから丁寧に作業をする。

自製清掃剤で拭き、紙やすりで磨き、仕上げに特製の魔法陣を描く。

パーツを組み直し、引き金の上にある五センチの空間にこの銃のコアである魔法石をセット。拳銃の機構が正確に作動することを確認し、棚にある染みをターゲットにトリガーを引き、発砲の反動と弾の弾道を感じ、さらに調整を行う。

微調整は重要だ。

面倒だが、こう、男のロマンみたいなものだろう。

久しぶりの作業だから一時間ほど没頭した。

引き続き残った銃を見る。長さ百五十センチ、二百センチまで展開可能。

拳銃と同じように整備し、十センチのコアをセット。

終わった後銃身折り、長さが百センチになった。

拳銃は腰の左右に下げるからこれは背中だな。


今日の作戦、と言っていいのかわからないが、で俺と灯理の顔を見られたらアウトだ。

最善の状況は誰にも知らないままでテロリストを確保するか、敵さんを無力化することだ。そのために潜伏の場所をよく考えなければならない。なにせ俺たちの存在がばれたらテロリストは第四区から潜入してきたもの以外にもいると発覚されてしまうからだ。

オリジンの駒に迷惑をかけたいけどまだその時間じゃない。

戦闘地域を見渡せる高所、両方の布陣の穴を突く移動ルート、万が一発見された場合の行動、警察とテロリストが取るかもしれない行動、脱出ルート、必要の装備、などなど。

考えなければならないことはたくさんあるが、時は八時十分、そろそろ買い物しないといけない。ツールボックスをしまい、銃をコートの内側に下げて店を後にする。

賑やかな繁華街を歩き、店を回る。

夕暮れで地面がキラキラしてる。周りから買い物する女性と商売している店員の声が聞こえてくる。

肉、野菜、ミルク、ナン、パン。時間をかけていいものを買う。

俺一人ならパンだけで大丈夫だが、凪と灯理もいるから手抜きはしない。

体重?知らないね。

美味しいものは全部女性の敵だ。

残念だったね。


ここの繁華街の食材は大陸本土のそれとあまり変わらないが、魔術の道具のおかけで食材を新鮮のままに保存することが可能のため、質と量も大陸より優れている。

と言ってもほぼ全部の食材は産地直送だから根本的に同じのものなんだが、結局料理人のスキルが問われる。

一と一点一の差だな。

いろんな店の人間と世間話をしながら住宅区にある凪の住むマンションへ向かう。

情報収集は大事だ。

商人たちが愚痴らないということは住民たちは今晩の戦闘のことを心配していないだろう。

計画通りだ、ここの住人は割とタフな精神をしているから彼らが心配しないなら協会支部も大きな動きに出ないはずだ。少なくとも俺の知らない場所で動くことはない。

心配してきたな、後で一応ダメ押ししておくか。

五分くらい歩き、周囲と同じ形を持つ青いマンションに着く。

白い内装のホールには結界魔術があり、住民ではない人間が無理やり入るとそいつを捕縛し、警察に知らせる。

その結界はマンション全体を守っているためある程度は安心できるが、俺は凪の住む七〇七室に自作の結界を張っている、念には念だ。

これも特区にしかない保全装置だ。

本土の方は警備員頼りだから侵入とかはそっちのほうが簡単だ。

こっちだと少し面倒くさい。

階段を上り、灰色の廊下を通り、目的地に到達。

鍵でドアを開き、中に入る。

「・・・」

「・・・」

空気が凍った。

目の前に少し理解に苦しむ景色が広がっている。

二人の少女が肌を晒していた。

床には脱いだ店の制服があり、凪はその近くで下着を膝まで下ろしていた。灯理の方は片足を椅子に乗せてタイツを外している。二人の上半身は完全なる肌色で、ウェストと背中と胸と手が愛嬌のあるなラインを描く。

「まだ肌寒いから、早く着替えないと風邪引くよ?」

まだ夜ではないとはいえ、油断したら体の弱い凪が風邪を引いてしまう。灯理は耐性がある方だけど油断はダメだね。病気になったらどうする?看病は俺がちゃんとするから完治は約束できるけど。

いや、逆に言えば一日十時間付きっきりで看病できるということか!よっし、今からでも遅くない、軽い風邪にできる薬を・・・

はっ!駄目だいくら何でもそれはだめだ、苦しむ二人の顔は見たくない、しかし赤らむ二人のどろんとした目も見たい!

支離滅裂な思考がこれ以上暴走しないように何度も頭を壁にぶつかって冷静になる。

「そうだ、クールになれ、俺。」

深呼吸一つ。

メンタルリセット!

よし、ビシッと決まったな。

ということで何もなかったように俺はそのまま三日分の材料をキッチンに運び、コートを脱ぐ。

それなりに重さを持つ袋から今日使う材料を取り出し、残ったものを冷蔵庫に入れる。

ちゃんと種類を分けておかないと感染とかが起こったら大変だからね。

「・・・」

「・・・・・・」

妙に静かだから気になってリビングを見やると、彼女たちが服で身を隠して、震えてた。

なんだろう、やはり寒いではないか。なら早く服を着ればいいのに。

もうすぐ春とは言え夜はそれなりに冷えるから。

だがその前に言っておきたいことがある、割と大事なこと。

「着替えるなら部屋の方が暖かいよ。」

「・・・!」

包丁で肉を切り、胡椒を少々。

この肉は質がいいから調味料は別にいいかな?

「トウ君の、馬鹿!!」

「セクハラ、変態・・・」

涙目で睨まれた、どうして?

今更着替えているところを見られて怒っているのか?

家族なら普通だと聞いているが、この二人の反応を見るとそうではない気がする。

どうだろう?

やはり人間は難しいな。

って、靴下を投げるな、当たっても痛くないから意味ないと思うけど?

ちょっ、制服もダメだよ、それなりに高いからな!


「ご馳走様でした。」

八時半過ぎで俺たちはご飯を食べ終わった。トマトシチュー、クリームスープ、混ぜご飯、カレー。作りすぎた感があるが、美味しく食べてもらったから別に良いだろ。

その二人は何をしているというと凪はソファーで本を読み、灯理は床に座りストレッチしてる。健康な肌色の太ももから尻までのラインがよく見える。

凪は水色のワイシャツとハーフパンツ、灯理はキャミソールとトレーニングパンツ、どっちも人に見せる姿ではないな。

まあ家族だからいいのだろう、よくわからないな。

さっきは怒っていたのにね。

皿を洗い終え、手を拭き、エプロンを椅子に掛ける。

「それではいってくるよ。戸締りはちゃんとチェックして、シャワー浴びたら、ちゃんと髪を乾かし、寝る前に歯を磨くこと、あとちゃんと布団を掛けてね。」

「言われなく、ても。うる、さい。さっさと、消える。」

まだ怒られたよ、なんで?


こうして、暗躍する傍観者は下準備の夜を迎える。

連続残業えええええ

つーかーれーた

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