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悪役は難しい  作者: エリュシオン
テロリストを応援するお仕事
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雑務・変動

長い時間をかけて組み上げた計画がヒロインの願い一つで変わる。

可愛いからいいのですよ。

主人公は‘家族‘にただ甘えです。

夢のない短い仮眠を終え、意識が浮上する。

生理時計では二時間くらい寝たか。

あっちこっちを回り、仕掛けとかで店に帰ったのは五時、つまり今は七時くらいとなる。状況を把握し、目を開ける。椅子に座ったまま寝たから腰が痛い。

「もう起きるの?あまり寝ていないンシャーナイ?」

じーっと俺の寝顔を見てる灯理が残念そうな顔で焼肉を乗せたパンを食べている。

女の寝顔ならいざ知らず、男の寝顔を見ても面白くないんだが。だらしない寝顔をしていないから、見てもつまらなくてご飯のおかずにもならないはず。

「まあね、そろそろ報告があるかなと思って。警察の調査を邪魔する方法はいくらでもあるから、どの方法を選ぶかな。フラグもさっき適当に折ったし。」

テーブルにあるサンドイッチを食べ、口の中に卵焼きのふわふわと出し汁の甘さが広がる。うん、我ながら良い出来である。

「悪趣味よね、それ。」

「割りとどうでもいい趣味だからね。」

「だからなんだね、半時間前街の方でまた民間人が攻撃されたのって。ちなみに警察は今追跡中だってさ。まあ、捕まれたらそれはそれでいいんだけど、どうせ下っ端だし、無駄に終わるんじゃない?」

一見酷いこと言っているが、彼女は事実しか言わないようにしてる、下っ端はいつも切り捨てられる側だから捕まえても仕方がない。

「いや、今使っていいテロリストは六人しかいないから下っ端も大事なリソースだよ、無駄にできないさ。」

「そう?トウ君がそう言うのなら、ソウカナ?」

彼女は今起こってる事件に不快と思っているのだろう。

形のいい眉を寄せているし。

騒ぎ大っ嫌い、平和好きな灯理らしい。

彼女の近くで騒いだら全員殲滅だからね、この子。

「食事の時は笑った方が良いよ、楽しいことだからね。いつもそんな顔していると、皺ができてしまうよ。」

彼女の両頬をつまむ、柔らかい。でもその表情は晴れない。

やはり訊ねるべきか。

「悩みがあるのか?」

灯理がびっくりして肩が跳ねる。

間を開いて諦めたのか目が泳ぎながら口を開いた。

「早く終わればいいなって、やっばり騒ぎはいやだよ。騒ぐ声が凄くうるさいもん、思わず現場にいる全員を殺したところだったよ、私。」

このように極端な手しか使わないから今朝何もするなといったからね。

つまり早く攻撃事件を終わらせたいのだろう、そのために関連する警察もテロリストも全部排除する、という物騒なことを考えている顔だ。怖い。

人が居なければ騒ぎは起きないのだから。

だがこっちから仕掛けたら計画が破綻する可能性があるし、味方も要らない被害に遭う。

流石に皆殺しした上で必要な人柱と生贄を準備するのは骨が折れそうだ。

だから最善は余計なことをしないことだ。

テロリストの子供たちに任せればいい。彼らの未来は彼らが決めるべきだ。

そういう予定で準備してきたし、成功率というか失敗率はこれが最も低いからね。

あとどうでもいいけどここで介入したら面白くない。

現時点では失敗する可能性もまだないから計画変更は必要ない。

それは俺にとっての合理的判断である。

だから俺は動かない。

まあ、この子はそれを理解した上でこう言っているのだろう。

「それでもと、だね。まあ、わかったよ。騒ぎは早く終わるに限る、イレギュラーは基本的に面倒だ。」

一応言い訳を口にする。

こっちの計画に支障が出るかもしれないリスクを天秤に乗せる。

それがとっちへ傾くのが明白だ。

いや、家族の願いを出来るだけ叶えようとする方針だからいいか。

失敗にならない支障なら問題ない。

この程度のことは努力すべきだ。

「いいよ。間接的になら、戦闘範囲を狭めるとかいろいろやり方があるし、後の計画に差し支えない程度にね。ついでに警察たちに大ダメージを与えたほうが面白そうだ。」

何より警察は面倒な勢力だから削っておいて損はない。

それをテロリストのせいに出来ればさらにグッドだ。

俺が口を閉じると灯理はぱっと立ち上げ、テーブルに乗り出してキラキラした目で俺を見る。近いよ?

「いいの?本当に?本当の本当に?本当の本当のホントウニ?でも計画を練り直す必要があるんデショ?全員排除しチャオ?」

俺が計画を変えるのが珍しいからこうして確認するのかな?

提案の内容は極めて危ないけど。

まあ、犠牲は今回の計画の要だから心配しているだろう。

都合上この時点で負傷者を大量生産するわけにはいかない。

犠牲というのは正しいタイミングで出るからこそ素晴らしいのだ。

無駄死にはよくないし無駄にできるリソースもない。

余ったリソースは有効運用に限る。

「お前のそういう所を計算に入れないほど甘くないよ。それとも俺はそんなことも出来ない馬鹿だと思っているの?」

俺の質問を聞いて灯理は慌てて手を振り、否定する。

「慌てる灯理は可愛いな。」

その慌てる姿を見て口が緩めると、意地悪と灯理がぶつぶつ文句言って、柔らかい手を伸ばして俺の額を突く。

「なら問題ないな。早く終わらせるように動く、それでいい?」

騒ぐ奴がいなければ騒ぎも終わる。

一応警察とセキュリティの人数を削った方が何気に便利だし、情報分析とか捜索範囲とかね。いろいろ手を打っておこうか、うちの姫のために。

まずは警察たちのヘイトを集めて非暴力的な案を捨てさせる、そしてテロリストの子たちに計画変更を知らせる、使えそうなプランを事前に渡したから大丈夫のはず。

あ、ミカエルの情報も伝えておくか、第四区からの追手だと言っとくか。こうすれば彼の説得の成功率は低くなるはず、今後の展開のためにも是非失敗してもらいましょうか。

テロリストの子供たちは非常に残念だがこっちのものだ、返す前にしっかりと使ってもらおうか。

あ、忘れる前にオリジンの駒を煽っておくか。警察とかの小人数の強襲とかいやだね。

それとうちの生徒が動く前に戦う下地を整えないと。もうすぐ学園に支援要請が届くはずだからそれも含めてオリジンの駒に伝えようっと。

ちゃんと全員も働いてもらうとしよう。

「うん!ありがとう、トウ君。」

悩みを吹きとんだ笑顔を浮かべ、サラサラしたポーニテールが空を舞う。

「大丈夫、この程度なら問題ない。失敗はしない。」

そう自分に言い聞かせて。

現場にいるときに臨時で仕様変更とか、死にますよね。

いい子は真似しないでくださいね。

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