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悪役は難しい  作者: エリュシオン
テロリストを応援するお仕事
7/27

雑務・帰還

主人公らしい主人公登場。

危ない時に覚醒する歩くご都合主義(悪役さんの計画通り)

よろしくお願いいたします

「クエーサーよ。俺は帰ってきた!」

やあ、まさか本当にこの決め台詞を口にする日が来るとは。

えへへ。

正義感が溢れる顔つき、サバサバしてる茶褐色の髪、鍛えられた体をしてる少年、昴皇碇(すばる こうてい)は軽い荷物を地に置き、水を飲む。春休みに里へ帰り、一週間を過ごした。親戚と釣りとか、小学時代の友達と花見するとか、とても有意義の時間を過ごした。

「お帰り、皇碇くん。里帰りどうだった?」

肩に触れる黒髪の女の子が手を振り、船場で迎えてくれた。

「お、久しぶりだな、委員長。もちろん楽しいぜ、いっぱい食ったしな。」

同じクラスの委員長橘百花に手を振り、荷物を背負う。

橘百花は昴皇碇の友達の一人で、クラスの委員長。人当たりが良く、親身に相談に乗ってくれるのでクラスと教師の信頼を得ている。本人も人助けが好きなのでみんな良く助けてもらっている。

何度も告されたが、まだ恋人はいない、と聞く。身長は普通の百六十センチ位、スタイルもそこそこ良い、学力は上の下で、如何に普通に優秀な女の子である。今日は清楚な浅葱色ワンピースを着て、麦藁帽子と白いブレスレットとサンダルを付けている、田舎で旅をするような姿が彼女にぴったりで、思わず見とれた。

「どうしたの?早く行かないとバスに間に合わないよ。」

「あっ、ああ。」

百花の声で我に返り、慌てでバス停へ走った。

バスは特区にしかないから初めて見たときに本当に驚いた、なんだこの箱、と。

一週間ぶりの景色なのになぜか懐かしい感じがする。それだけ自分はここに馴染んだことだろう。

「もう一年か。早いな。」

「とても充実した時間を過ごしたことじゃないかな?」

百花もそれを同意し、一年生の出来事を口にした。

「泥棒を追ったり、いじめられた子を助けたり、実戦でエリートクラスの生徒を倒したり、犯罪者を捕まえたり。おかけで皇碇くんは実戦トップ10になったし、女の子たちと仲良くなった・・・よね。」

途中で機嫌が悪くなり、最後は完全にジト目になった。

皇碇はその理由が分からないまま慌てて話題を逸らす。

「そっ、そんなことよりさ。俺強くなったかな。」

「そうね。実戦トップ10だから強くなったと思うよ?」

「そっか、サンキューな。」

雑談しながら歩くと迷子になっていた老人発見した。

案内してたらバスがドアを閉めようとしていた。

「え、やばい!委員長、走るぞ。」

百花の手を取り、バス停へ走る。

なんとかバスに乗り、汗を拭き、荷物を降ろして座る。

まだ肌寒い天気でも、走れば汗をかく。

「よかったね、あの老人の力になれて。走る羽目になったけど。」

文句を言いながら百花はこのくらいのことならいつでも付き合えると思った。

目の前にいる人が困ったら助けるのが皇碇という少年だ、当の本人は頬を掻きながら笑った。

褒められるのがなんだか恥ずかしいから話題をそらした。

「その服最近買ったのか?似合ってるぞ。」

新しい話題がないからとりあえず、新しい服を褒めるのが一般論のマナーだとルームメイトに言われた。増して休日なのにわざわざ迎えて来てくれたんだ、褒めないと罰があたるもんだ。

それに可愛いと思ったのも本心だし。

「うん。昨日、皇碇くんを迎えにいくって言ったら、コーディネートしてくれたんだ。普段のお礼も含めてるから服はあけるって。」

なんかいい香りするんだが。左右を見ると、すぐ百花のシャンプーのいい香りだと分かり、気を逸らすために街の方を見る。

「あいつがお礼?珍しいな。」

なんだか気まぐれのデザインがバイト先のお偉いさんに買われたからその試作品を百花用にカスタマイズしたものであるらしい、と百花は聞いた。

過去の経験上、あいつがデザインした服は馬鹿高くてすぐ品切れるし、上流の金持ちが何着を買うという。道理でデザインが少しずれてるわけだ、古代の貴族のプライベートドレスって感じがする。

可愛いからいいか。

「あいつ寮にいるのか?」

「ううん、今日から休みの終わりまでバイトだから寮に帰らないって言ってたよ。それとね、彼は本当に休みの間にパンしか食べてないよ、自分だけならそれだけでいいって。」

一週間ぶりということでテンションが高く、二人はしばらく話し込んだ。クラスメイトのこと、休みのこと、宿題のこと。

バスが石造りの道路を走り、外の風景が素早く変わる。船場と隣のビーチ、観光スポットの湖畔公園、公園と住宅区の間にある政府施設、緑の山のその向こうの魔法協会の支部と研究所、煉瓦の住宅、騒がし繁華街。


「うん?何の騒ぎだ?」

バスを降り、繁華街の方からパトロールカーと救急車が見え、ざわめきが耳に入る。制服の男たちが目撃者を探したり、証拠を回収したり、魔法で痕跡を調べたり、大変お忙しいご様子だ。

皇碇が百メートルも離れた状況を見えるのは百花が視力強化のエンチャントを掛けたおかげ、つまり二人は魔法使いである。

「どうする?様子見に行く?」

「当然だ、委員長も分かってるからエンチャントを掛けてくれたんだろ?」

困っている人を助けるのが当然だ。

「だめと言っても聞かないでしょう?わたしじゃ止められないもん。」

ため息を出し、百花が隣を歩く。

一緒にいる時はいつも皇碇が動き出し、騒ぎを起こす、百花がそれをフォローする。マニュアル通りのツーマンセールである。

第五学園で一年をかけ、知識だけではなく実戦も鍛えた。

普通は三人か四人だが、訳ありでこういうのに慣れている。

ここは魔法特区のため、魔法学園の生徒はある程度警察と一緒に行動できる。

皇碇たちは時々警察に協力したから、難なく責任者である神崎警部に会えた。

「お疲れ様です、神崎さん。何があったんですか?」

会話を百花に任せ、皇碇は現場を見る。

だが観察は苦手である、じっとしていられない性格なので、何も見つけず、すぐ飽きて暇を持て余す。時に仕事してる警察に挨拶し、世間話をする。

何してきたのか聞きたい。

「久しいぶりだな、一年生、あの胡散臭い仮面はいないのか、まあいい。最近どうも外来の魔法使いが暴れているんでな。こっちは人手が足りないからバイトの魔法使いも現場に出すくらいだ。すぐ学園に協力を要請するはずだぜ。」

仕事の邪魔しないように話を切り上げ、神崎に会釈する。

まだ学園に協力要請がないから直接情報を話すわけにはいかない、そういうルールだ。だからその代わりにそのバイト君に話を聞けと言われた、自分じゃ教えることができないがバイトなら口が滑っても仕方がない。神崎なりの方便である。

ふたりは隅まで下がり、周囲を見渡す。周りは猫の手も借りたい状況だから見学してるバイト君をすぐ見つけた。

二人はその見学している金髪の男に話しかけた。

「はじめまして、私は第五学園一年の橘百花です、こっちは同じく一年の昴皇碇です。あなたがバイトの魔法使いさんでしょうか。」

「ああ、俺がバイトのミカエル・ガンでランクBだ。よろしくな、昴に橘、でいいかな。」

背は平均の百七十くらいだが、強い眼差しのおかげで年上に見える。が、黒色のジャケットと青いジーンズはさすかに警察ぽくないし、金髪と外人の顔つきのせいで違和感を覚える。

「Bですか?そんなすごい人先生以外初めて会いました。」

ランクは魔法使いの強さを計るレベルである。最弱で無能、魔法が使えないのがEランク、普通の学生はD、優等生はC、普通の成人魔法使いもCで、ベテランはB、プロはA、Sは大魔法使いで、さらに上にビヨンドという人外がある。

ちなみに皇碇と百花はランクCである。

つまりミカエルはベテランの魔法使いに当たる。

そして皇碇たち学生は普通卒業する前に実戦に参加しないため学園の先生以外にBの魔法使いに会う機会はない。

「Bなのにバイトなのか、ミカエルさん?」

「ちょっと、皇碇くん!すみません、その、何があったのか聞かせてもいいでしょうか?」

百花もそれを気にしていたのか、質問を続けた。

Bの魔法使いは主に協会の任務をこなす中堅であり、警察所属なら警部か警部候補のはず、バイトなんかになるはずがない。

普通な疑問だが本人に聞くのはさすがに躊躇う。

「まあ、その、大人の事情だ。今朝神崎さんに初めて会って話をして、バイトをさせてもらったんだ。それで本題だが、今回の事件はテロリストの襲撃だな。小道から魔法弾を乱れ撃ち、市民を無差別攻撃した。そのせいでオフィスの警察たちも現場に来ていると聞いている。でも前回の現場と同じ何の痕跡を残していないし、目的も不明、このままじゃ捕まえそうにないな。」

今朝あの小道で何も見つからなかったし、と呟く。

断言こそしなかったが見つかる可能性は低いだろう、ということだろう。

「まあ、ともかくだ。調査に手伝ってくれると聞いているから、まず局に行って状況と資料を整理しよう。警察の人たちと違う道で探せば何かが分かるかもしれない。はっきり言ってここにいてもしょうがないしな。」

二人も同意し、ミカエルとともには南方向にある警察局へ歩き出す。

十五階建ての警察局に入り、ミカエルたちは二階にある休憩室へ向かう。

「何回来ても慣れないな、ここの雰囲気・・・」

無機質で灰色一色の外装通り、建物の中に入っても飾りのない廊下と扉が重い雰囲気を放ち、そのせいで生徒ふたりはもちろん、ここに来たばかりのミカエルも思わず表情を引き締める。

警察は基本的実用性を重視するから廊下は広くて、部屋の配置も籠城戦や強襲戦とか実戦を想定した上で決めたもので、なんだか警察局と言うより要塞と言った方が適切だ。まあ、この島を守る第一人だから当然と言えば当然か。

壁や床も灰色で、デザイナーにやる気あるのかと聞きたいレベルだ、よく磨かれた大理石の床が日差しを反射し廊下に僅かな変化をもたらす。

人手不足の問題はどうやら本当に深刻のようで入り口に居た警備員以外に誰も見かけないまま三人は休憩室に到着した。

この建物の中に武器と攻撃魔法を探知する魔法があるとルームメートから聞き、皇碇はこの三分間でもう五つそれらしき魔法を見かけた。

「まあ、探知魔法の存在自体知らなかったら気づく可能性はほぼゼロと言っていい程高レベルの式だな、これ。」

自分の勉強不足を改めて確認し、皇碇は苦笑する。

もっと人を助けるために勉強しないと。

固い筋肉をほぐし、ミカエルは持ってくれたコーヒーを入れたカップを持ち、木製椅子に座る。ギーギーと椅子が軋む。

そう言えば第四区は外国なのに言葉が通じるな、と今更思った。

「五百年前の第三次魔法会戦の時、面倒だから全世界の言語を統一しよって、授業で学んだでしょう?皇碇くん。」

同じデザインのカップを持った百花は呆れた表情で皇碇を見る。

「いや、その・・・もちろん覚えているぞ、うん。」

「宿題、大丈夫なの?」

思わず誤魔化したが、百花はさらに冷たい目で自分を見る、なんだか救いのない馬鹿を見る目だ。

その目線から逃げるように皇碇はコーヒーを飲む、が。

「苦い・・・」

紅茶や緑茶や麦茶といった比較的に甘いものを飲んでいるからコーヒーを飲む機会がない。精々試験前の徹夜ぐらいか。

「ああ、すまない。はい、ミルクと砂糖だ。」

自分の分とミルクと砂糖をテーブルに置き、ミカエルも椅子に座る。

熱気を吹きながらミルクと砂糖をカップに入れ、甘み飽和攻撃を仕掛ける。五回目の攻撃が完了し、皇碇はスプーンを手放した。

一口飲む。

「・・・」

やはりまずいな。

眉を寄せ、黒い液体を見下ろす。

「もう五回くらい不味いって神崎さんに言ったはずだよな、俺。」

「そうか?悪くないと思うぞ、これはこれで。」

ミカエルはコーヒーを美味しいそうに飲み、厚い資料をテーブルに置く。皇碇はコーヒーと格闘している間に、百花は資料に目を通す。

百ページ以上でどの事件も細かく記載されている。

「どこからはじめるものかな。朝の時に神崎さんもずいぶん悩んだみたいだし。魔法関連の事件や犯罪なんて魔法特区じゃ数えきらないほどあるから、どれが今回の事件と関係あるのかさっぱりだ。」

悪口を言っているが、ミカエルはちゃんと希望を持っているし、諦めていない目をしている。とても強い目だ。

まだ子供たちが直接罪を犯した情報はない、ならば彼らを第四区に連れ戻すのも不可能ではないはず。そのためにこうして警察に協力している。

「敵、テロリストの目的はなんだ?それが分かれば事件の全貌が見えてくるはず、と思う。」

「目的?確かここの協会支部の邪魔と攻撃だと聞いているが。」

それも神崎から聞いたのだろう、ミカエルの口調に迷いがある。

「支部の邪魔、か、それにしても回りくどいな・・・委員長、どうだった?」

「はい、終わったよ。」

百花は資料の半分を皇碇に渡した。

「それは?」

「ああ、俺たちから見てこの街では珍しい事件だよ。魔法による攻撃とか強盗はたまにあるが、このような攻撃事件はあんまりないんだ。現場の警察ならわかるはずだけど、全員忙しいから仕方ないかなって。」

皇碇から資料を受け取り、素早く目を通す。彼の言った通りほぼ全部は攻撃事件だ、被害者も時間も関連性がないが、言われてみれば違和感がある。数だ、攻撃事件の数が多すぎる、なのにほぼ怪我人が出ていない。これは本当に攻撃事件なのか?

攻撃というわりに被害が少ない、それで入院した怪我人と駆り出された人手で確かに警察は人手不足に落ちたがもっと効果的な方法があることも否めない。

では警察を人手不足に追い込むことも目的のひとつであるなら、いったいその本命はなんなのか。それがわからなければ受動的な態勢から能動的な行動に切り替えることができない。

つまり、一方的に追いかけるしかなくて先回りができないということ。

それじゃだめだと焦るも状況を打破する方法を思いつかない。

どうすれば子供たちを助けられるんだ?もう時間がないんだ。

「くっそ。」

そんな酷く焦慮するミカエルを二人は心配しそうに見つめた。


その中に街の店の貨物が破壊された通報はながった。

文章の長さが違うのは構成の問題というか適当に分けているだけ、と思います。

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