表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役は難しい  作者: エリュシオン
テロリストを応援するお仕事
3/27

プロローグ・鼓動

宜しくお願い致します。

「はっ、はっ、はっ」

どれ程走ったのだろう、もう覚えていないし数える程の体力もない。

只々ひたすらに足を投げ出して体を前へ引っ張る。

足が痛い、喉も痛い、鼻も痛い、目も痛い。

何もかも痛い、もういやだ。

でも死ぬ勇気もなくて。

仲間たちを残して死にたくない。

物心が付いたときから一緒にいる仲間の存在だけが自分の支えであり、縛る鎖だと感じる。

何度か角を曲がって足跡を気を付けて走るとようやr本当の拠点の近くに戻れた。

やっと休めると思って緊張が途切れる途端前方から三人の青年が歩いてきた。

街灯のせいで顔が見えない。

なのにその体と影はやけに大きいに見えた、心細い影響だと思う。

ほら、理不尽なことはいつでもこうして襲ってくるのだ。理不尽はいつも弱い者の敵だ。

どれだけ準備しても失敗したら死ぬ、そしてその失敗はこのようにわけがわからないものばかりで納得がいくはずがない。

思わずに笑った、もう何もかも諦めたい。

いやだ。

「うん?お、ラッキー。子猫ちゃん発見。」

気持ち悪い弧を顔に描いたチンピラがわたしを見下ろした。

「お?マジで?可愛いね。な、初めてはおれでいいよな、なあ!」

「顔は悪くないが、体はな、小さい。」

「だよな、これじゃ気持ちよくなる前に痛そうだ。まあ顔はいいから、これはこれで遊ぶ甲斐がある子猫だな。」

「んじゃ、気持ちよくなれたらそっちに回すぜ。」

「あくしろよ、ロOコン。」

体が小さいって余計なお世話なの!これでも成長しているの!

その気持ち悪い視線がわたしの体を見ていると思うと反吐が出る、でも魔法が使えないわたしじゃこの三人から逃げられない。

わたしは緊張で顔が引きつっているし、足も震えている。

当然でしょう、わたしはただの女の子なんだから。テロリストと呼ばれていても実戦に出ても根っこはただのどこにでもいる女の子だ、決して天才でもないし戦闘狂でもない。

読んだ通り無理やり深呼吸して自分を落ち着かせ、まず右足を下がらせる。

そして左足、まだ右足、左足。

何とか動けると思ったら背中が壁にぶつかった。

たったそれだけで腰が抜けそうだった、危うく反動で腰が抜けそうで泣きたくなる。

周囲を見回すが使えそうな目星がない。

通りすがりの人はいない、使えそうな武器や道具もない、仲間もいない。

つまり逃げ場はない、戦うだけの力もない、走って脱出する体力も残っていない。

最近筋肉が少しだけついた気がするがそれでもか弱い女の子でしかない。

何もないのだ。

世界は、優しくないから。

それでも諦めずに逃げる方法を考えるが、そんなものポンポン出るはずもなくチンピラの一人がわたしの目の前に立った。

ゆっくりとこっちへ歩いてくる、逃げ場はないぞと笑う。

背筋に恐怖が走る。

彼らにとっては楽しい時間だろう、でもわたしにとっては絶望する時間で心が削られていく。

「・・・!・・・っ」

助けて、と叫びたくても声が出ない。

当然だ、わたしはまだ成年していない子供で、テロリストと呼ばれていても捨て駒として捨てられたからこそこそ逃げる経験があっても、こうして真正面から迫られる経験はない。

今絶望していないだけで褒めて欲しいもの。

股間からいろいろ出そうだけど、頑張って我慢した。

でももう限界だ。ここに頼れる家族もいないし、逃げる気力も精神も残っていない。

つまり、詰んだ。失敗。

あっけないね、と思う。

でも仕方ないでしょ?わたしたちは所詮捨て駒で、普通の人間なんだから。

だから、わたしは。

「・・・っ」

諦めて。

「・・・やっ」

せめて、家族たちが無事生き残れるように。

「やっ」

ねがって。

「うん?」

「いや・・・」

わたしだって最後に、幸せになりたかった。

「いやだね、これからは楽しい時間だよ?なんで泣くのさ。」

失敗しても笑って済むような普通な生活がほしい。

「い、や」

泣いて諦めて?

「っ、いや」

迫ってくるチンピラの手がわたしを震わせる。

あきらめ、

「いや」

な、いもん!

「っけて」

わたしは。

絶望を振り払って。

「たすけて!マスター!」

そう叫んだ。

なぜだか親友の名前じゃなく、マスターと、全身の力を乗せて叫んだ。

「やぁ、仕事だよ。」

その時だった。

物語にもある、そんな都合主義のシーン。

どこからでもなく空から舞い降りて敵を倒す主役と助けられるヒロイン。

幼い頃から憧れて、ありえないと知りながら捨てきれなかった、夢のような景色。

白い影が、まるでわたしの主役のように現れたのだ。

熱い涙が零れて。

疲弊した心が、再び鼓動する。

「はい!」

わたしは、わたしの主役を見上げて、笑った。

理不尽な失敗と危機を打ち砕く英雄、主役。

わたしの主役。

わたしだけの、主役。

わたしのなかのなにかが、こわれる。

わたしのなかのなにかが、うごきだした。

投稿ってどうやるのでしょうか?

一時間もかけてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ