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(7)

 ピク。

 頬がひきつる私と、私の少しうしろで秋斗くんが目をまばたかせる。


「え? それって、おれたちのこ――うわっ」


 ガシッ。

 私の右手が、無造作に秋斗くんをわしづかんだ。


「み、美結さん?」


 ズルズルズル――


 秋斗くんの左手首をにぎりしめたまま、私は大股で人の流れを進んでいく。


 顔が、顔が顔が顔が顔がものすごく熱い。さっきから熱くて熱くて、フライパンで料理されている目玉焼きな気分だ。


 お似合い、お似合いってナンデスカ。あまりに突然のことだったから、否定するのも忘れていたし……!


 ああもう! なんで私、こんなことしているんだろう。反射的とはいえ、この状況どうしたらいいの? 打開策が見つからないまま、時間と場所だけがどんどん過ぎていく。


 しばらくして。


「ねえ、美結さん」

「なな、なによ!」


 前触れもなく名前を呼ばれて、私の声が上ずってしまう。


 しまった。もしかして、さっきのお、お似……ごにょらごにょらを否定しなかったから……? 恐る恐るふり向いた先で、秋斗くんの真っすぐな瞳につかまり、私は足をとめた。


「このままでも、もちろん嬉しいんだけどさ」

「なな、なにが!?」


 や、やっぱりきた! 私が次にくるだろう衝撃にあわてて身構えると、秋斗くんが自分の右手を差し出してくる。


 へ?


「せっかくだし、おれからも手つないでいい?」

「ぶっ!!」


 私は盛大に吹きだすとともに、うしろに倒れこみそうになる。

 そうだった。成り行きとはいえ、秋斗くんの腕をつかんだままだった。あわててはなすと、秋斗くんが解放された自分の腕と私の手を交互に見つめてくる。


「おれも、美結さんと手をつなぎたい」

「いや、これは……!」


 別に、手をつないでいたわけじゃ――


 思わずひっこめた私の手を、秋斗くんが強くつかんでくる。


「ひっ」

「さあ、行こう」


 そう言って、秋斗くんが私の前を歩き出す。


 な、な、な……! なんで、なんで、なんでこうなるの……!?


 形勢逆転。放心した私を、今度は秋斗くんが引きずっていく。私は完全に頭を真っ白にしながらも両足だけは動かしていたらしい、気づけば小高い丘のようなところに連れてこられていた。


 どこ、ここ……


「ここは、おれのお気に入りの場所なんだ」


 私の疑問を受け継いで、秋斗くんが説明してくれる。

 お気に入りの場所? そう言われて、私は辺りを見わたしてみた。


 サア、と風が吹き抜けていく。短い緑の草が生い茂ったそこを少し歩くと、眼下に街並みが一気にひろがってくる。整然とならんだ白を基調とした建物や色とりどりの商店用のテント、そこを行き交う人の波。そして一番奥には、赤と金の紋章をかかげた荘厳なお城。まるで立派な一枚の絵画を見ているようで、私は思わず感嘆の声をもらしてしまう。


「きれい……」

「うん。ここからなら、この国の様子がよく見えるでしょ? なにがあっても、すぐに駆けつけられるし対応もできる。個人的ないざこざで、迷惑をかけることもない。だから、ここがいいんだ」

「ふーん」


 迷惑をかけたくない、か。

 心地いい風に髪をゆらされ、私はそっとそれをおさえた。


「秋斗くんは、この国が好きなのね」


 なにげなく私が口にした言葉に、秋斗くんが目をぱちくりさせる。


「好き? ――うん、そうなのかもしれないな。どこから来たのかも素性もなにもわからない、完全によそ者のおれを迎えいれてくれて、今も必要としてくれている。すごく、感謝しているんだ」

「へえ、そうなんだ」


 町を見おろす秋斗くんの横顔を見つめながら、私は頬に手をあてた。さっきも、感じた。なんだろう? この違和感みたいな、変な気分は……


 「あ」と思い出したように、彼がこちらを向いた。


「一番は、美結さんだから」

「ぐ……っ」

「それは、絶対にゆるがないよ。美結さんのためなら、この国を敵にまわしてもかまわない」


 ニコ、と屈託なくほほえまれ、私は不覚にも体温が急上昇していくのを感じてしまった。しかし、その内容はその表情とは不釣り合いなほど物騒なもので。一歩、私の右足がうしろにさがる。


「ど、どうしてそこまで言いきれるの? 私は、あなたの近所に住んでいた、何の変哲もない、ごくごく普通の一般人のお姉さんでしょ? それって、世間でいうただの幼馴染じゃない」

「美結さんは、ただの幼馴染じゃないよ。きみはおれの――、恩人だから」

「恩、人?」

「うん。だって、きみは――。っ! 美結さん、こっち!」

「え? きゃあっ」

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