42 交渉
また随分とお待たせいたしました。m(_ _)m
「私の今後の人生のすべてを補償金と領地に充ていただけませんでしょうか?」
ルイーザの従者『ジュリア』は俺に対してこう宣言した。
この国では奴隷制度は50年ほど前に廃止されている。そして、この国では法律によって人類が人類を隷属させる契約を行うことは原則的に禁じられている。
そのため彼女が言う『人生のすべて』とは『奴隷』としての契約などではなく、『使用人』としての契約を差しているのだろう。契約次第では奴隷と変わらないような内容にも出来てしまうからな。
まあこれも世間にばれたら一気に非難されてしまうわけだが。
「生憎だが、使用人の類は不自由はしていない。君自身の身に付けている技能も領地や賠償金に値するほどの魅力は感じないよ」
厳しいかもしれないが、ここはしっかりと断らなければならいない。禍根を残さないためにもな。
「分かりましたわ・・・」
ルイーザが呟いた。
「やってやりますわ!!ジュリアを!大切な家族を失うくらいなら!男爵家の威信にかけて戦います!!アナタの両親がどんなに権威を持とうとも、それがアナタの実力ではないことを教えて差し上げますわ!!!!」
仁王立ちでこちらを指差すルイーザは先程までとは打って変わり、威風堂々と宣言する。
「では男爵家の権威や影響力は君自身の実力というわけだな?自身は他力本願でありながら他人がやれば非難するのはおかしな話だ」
「っ!?」
昨晩の話し方からもわかってはいたが、彼女はかなり単純な思考をしがちなようだ。感情のままに発言をしているように見える。
だからこそこんなにも簡単に矛盾が生じてしまい、簡単に揚げ足をとられてしまう。
「そうですわね。訂正いたしますわ。マルヴェイド伯爵家はルーズヴェルト名誉士爵家に宣戦布k「はい、そこまで!!」!?」
宣戦布告をされたら流石に大事になりすぎる。実際には賠償を求める気もないのだからこのくらいで充分だろう。
「そこで宣戦布告をしたらどうなると思っているんだ?たかが子供の言い争いでどれだけの領民達が苦しむと思う?『領民もまた家族である』と説いた先王陛下の御遺志にも逆らうようなことを簡単に宣言するな。もしこの場で宣言をするならば、本当に取り返しがつかなくなるぞ」
「で、でも!?それはあなたがあまりにも無理な要求をしたからではありませんの!?あなたが理不尽な要求をしなければ、わたくしもそんなことはいたしませんでしたわ!!」
彼女は少しムキになっているようだ。流石にやりすぎたか?
「俺は『不問にする』と言ったのに君が『償いをする』と申し出たんだろう?内容までこちらに任せたのだからその内容に文句を言うのはおかしいんじゃないか?」
ルイーザは理解が追いつかないらしく、目が左右に泳いでいる。かなり混乱しているみたいだな。
「それに従者や周りにいる者達も彼女を止めようとはしなかったのか?彼女が『貴族』として間違えたら止めるのも従者の役割だったはずだが」
周りにいた少女達も気まずそうな表情をしている。
「まあ実際にはさっき言った補償を求めるつもりはないよ。『何となく甘そうな奴』という判断をされたのがムカついただけだし。」
「え?別にそんなことは・・・」
「『先ほどトモヤ様のお話を聞いた以上は一族が絡むような要求をなさるとは思えなかったので・・・』。別に俺は一族としての要求が出来ない訳ではないぞ?特に要求しないとならないことが無かっただけだ。補償を奪えるなら容赦なく毟り取る。それこそ一族を巻き込んででもな」
まあ、普通の15歳ならそんなことは考えないだろうけどな。
「とにかく、気軽に相手に選択を委ねるな。やるにしても内容は自分から決めておけ。言いたかったのはこれだけだ。」
「そ、そうですの・・・?」
目がグルグルして大混乱中のルイーザはもう放っておこう。
「それから、従者のジュリアだったか?君は自分を安売りしすぎだ。護身も通常の従者としての能力も高いようだし、自身を持って『領地や賠償金に値する』と主張しても良かったと思うぞ?」
ジュリアは目を少し開いて何も言えないでいる。相当動揺しているな。
「取り敢えず、今回の一連の騒動は『互いに不問』として『今後、今回の騒動を利用しない』ということでいいか?」
「は、はい。その内容で勧める形でお願いしますわ」
俺自身も男爵家を相手に相当無礼な態度をとったからな。『互いに』不問にして自分にとって不利な点を潰しておく。
向こうは『自分が不利な状態』と感じているため、『対等になれる』条件だと思うだろう。だが実際にはこちらが不利な点もあるので若干こちらが劣勢。それを対等に『してあげる』ことで向こうの心境はこちらに負い目を感じてくれる。
交渉術はこちらのほうが得意だったみたいだな?




