4 成長と鍛錬の開始
俺は今日、五歳の誕生日を迎えた。
今日ばかりは普段父が座るテーブルの上座に俺が座る。母はにこやかに笑い、父は口元を微動だにせず目尻をだらしなく下げて、それぞれ俺の誕生日を祝ってくれている。
「誕生日おめでとうトモヤちゃん」
「もう5歳になるのか・・・・・・。きっと気づいたときには成人しているんだな。うぅ・・・」
訂正しよう。泣いてたよこのオヤジ・・・・・・。このオヤジ、今はこんなにだらしないが普段は立派な警備隊長だ。(初めて知ったときは本当に驚いたよ)
背中の真ん中までのびる黒い長髪を紐で1本に纏め、赤っぽい切れ長の目は眼力鋭く犯罪者を射抜くように見るらしい。ちなみに25歳だ。(母は23になった)かなり無口だがただの人見知りだ。(貴婦人方にはミステリアスに映るらしい)名前はスコティニア。父の額には真っ黒な、母の額には濃い紫の鱗が生えている。これは龍人族の特徴だ。
俺は父譲りの黒い髪を短めに切っている。瞳は母譲りの薄紫色だ。額の鱗は薄い水色。龍人の額の鱗は二十歳の成人の頃に生え替わり、成人前よりも濃い色の鱗が生えてくる。結婚相手に子どもの頃の自らの額の鱗をつけたブレスレットを送ることは男女問わず憧れる。龍人族にとっては結婚指輪のようなもの。どちらかが死んでも、相手のブレスレットを付け続けるという種族なのだ。
ついつい考えが脱線してしまった。両親と話をせねば。
「父様が泣くなら、ぼくはおとなになりません!」
リップサービスは大切だよね♪
「本当か!?あぁ・・・いや・・・しかし・・・・・・」
ちなみに、俺達が今住んでいるのは首都だ。父は首都の警備隊で何人もの犯罪者を逮捕し、賞金首も何人か生きたまま捕まえたらしい。その功績を認められて父は名誉貴族になった。名誉貴族は一代限りなので俺が父の跡を継ぐことはない。
父や母の後ろでメイドたちが微笑んでいる。多分俺の後ろのメイドも同じだな。父はまだ唸っている。こんな姿は家の外では見られないのだろう。
「いや・・・やはり・・・。うん。トモヤ、子供は大人にならなくてはならないのだ。たとえ私が泣いても、お前が旅立たなくてはいけないときがいつかは来るのだ」
父様、目がウルウルしてますよ。
「はい、父様」
母は口元を両手で抑えてクスクスと笑っている。
「二人とも、トモヤちゃんの成人は15年も先なんですよ?焦りすぎです♪」
「はい、母様」
さて、今の俺のステータスはこうなっている。
(ステータスオープン)
名前:トモヤ 5歳
種族:龍人(闇・氷)
レベル:5
体力値:30/30
魔力値:90/90
筋力値:50
防御値:55
俊敏値:62
器用値:250
知力値:200
幸運値:120
スキル
猫被りLv.3 刀術Lv.3 ナイフ術Lv.3 蹴撃Lv.1
種族スキル
龍化Lv.1 ブレスLv.1
称号
※天使『※※※※※』の加護、幸福の運命
名前が『トモヤ』になっているのは偶然ではない。ラフィがわざわざ俺の母に子どもの名前を『トモヤ』にするようにと神託を行ったらしい。※※値とあるものは一般的な人族の成人男性を100としたときの値だ。ただし、魔力値だけは差が大きく、0の人も少なくない。また、幸運値以外は成長や老衰で増減するのであくまでも目安だ。俺の知力値が高いのは前世の記憶があるからだと思う。器用値はおかしい。前世でも細かい作業が得意だった影響だろうか。俺の他の値は龍人族の一般的な8歳児に迫るらしい。だからこそ、俺は父にお願いしたいことがある。
「父様。ぼくに戦いかたを教えてください」
父は少しだけ目を見張り、頷いた。