31 学園長の憂い
今回はかなり短めです。
トモ坊やアリス嬢が部屋を出て行くと、ワシは深くため息をついて椅子にもたれかかる。
表情や発音からしてトモ坊は嘘を吐いてはおらんかった。
トモ坊は知らなかったのかのぅ。かつて『災厄の龍』と呼ばれた龍が元はヴァロア王国で暮らす龍人だったことを。そしてその龍人は体に竜と龍の力をそれぞれ持っていたことを。
『災厄の龍』は隣国に自らの生まれ故郷を滅ぼされ、家族や友人が亡くなったことを知ったときに覚醒したといわれておる。
一瞬で瞳が魔物特有の深紅に輝く瞳に変わり、龍の姿になると、どこかへ飛んでいってしまったそうじゃ。
その龍は一昼夜で隣国を焼け野原に変えてしまった。周囲の国々は事態が深刻であることから、僅か一週間で連合軍を結成し、『災厄の龍』の討伐に向かった。
実に二万を超えた軍隊は、あっさりと壊滅したのじゃ。そこで、当時冒険者の中でも精鋭だった者(Sランク冒険者)達に討伐の指名依頼が出された。ワシもその精鋭の端くれに選ばれ、その指名依頼を受けた。そしてワシらは1ヶ月戦い続け、元龍人を討伐した。
彼に強い想いを伝えることができる誰かがいれば、彼は人に戻ることが出来たかもしれん。じゃが、彼の家族や愛する人は既にこの世にはいなかった。
願わくば、彼女達がトモ坊を止めるための防波堤とならんことを。




