21 アリス(斧槍)vsトモヤ(杖)
先の二組の試合も終わり、ようやく俺の番だ。
俺の前に立っているのは身長は140cm程の小柄な少女。両手で抱えているのは巨大な斧槍。斧部分で断ち切る、鉤爪部分で引っ掛ける、槍部分で突き刺す等々、実に多彩な攻撃手段がある武器だ。その選択肢の多さゆえに使いこなすには相当な修練が必要とされる。
15歳の子供が扱いきれるものか?
「キミがトモヤ君だよね?」
少女がコテンと首を傾げながら聞いてくる。あざといが可愛らしいな。
「そうだ。どこかで会ったかな?こんなに可愛い女の子は忘れないと思うけど」
ついつい軽口で返してしまう。これでも前世とあわせれば精神年齢で35歳だ。15のガキでは恥ずかしくて言えないようなことも気軽に言えてしまう。
「えへへぇ。可愛いって言われるのはテレるよぉ。まあ会ったことはないよ。ボクの師匠がキミのオトウサマを知ってたのさ。キミの理不尽な武人っぷりも聞いてるよ」
「生憎そこまで武人じゃないよ。まあ、君が武人だというならあとは、
コイツで語ろう」
俺は杖を構える。左足を前に右足は後ろに、左手は杖の前三分の一に下から添えるように持ち、右手は杖の一番後ろをしっかりと掴む。杖の先は相手の首に真っ直ぐ向ける。
目の前の少女は俺の臨戦態勢を見てクスリと笑みを零す。
「やっぱり武人じゃないか。その顔、ゾクゾクする。」
少女も構えをとる。右足を斜め前に左足は斜め後ろに、斧槍を両手でしっかりと持ち、斧部分を下にするように構える。
「どっちが勝ってもキミとはトモダチになりたいな。こんなにワクワクするのは師匠以外では初めてなんだ」
「いいぜ、俺も家族以外と戦うのにこんなに気分が高揚してる。こんなの久しぶりだ。お前となら遠慮無く戦える。最高の親友になれそうだ」
「「さあ、始めようか!!」」
ギィィィン!!
杖と斧槍がぶつかり合う音が響き渡る。
「おぉう。勝手に始めおった!ええい!第三試合開始じゃぁ!!」
学園長の声が遅れて響く。やっべ、完全に忘れてた。少女も気まずそうな表情をしている。お互いの獲物で押し合いながら話し掛ける。
「忘れてたか?」
「うん。マズいかな?」
「大丈夫じゃね?もう開始だし」
「ソだね」
言い合わせたように両者は背後に跳躍し、構え直す。
「そうだ、ボクのことはアリスって呼んでよ。呼び捨てでね♪」
「俺はトモヤでいいぜ。よろしくな、アリス!!」
俺は話しながらアリスに接近し、鳩尾に杖を繰り出すがアリスは斧の腹でそれを防ぐ。
アリスは斧槍をこちらに向けることで杖を弾き、槍部分で突いてくる。
俺は弾かれる直前に手元に引き戻しておいた杖で斧槍を横に逸らせながら杖と右腕をアリスの斧槍に絡ませる。杖をアリスの肘に沿えて体を真後ろに向けながら腰の位置を低く、杖の位置を変えないようにしながら両手を振りかぶる。そして杖を持ったまま両手を振り下ろす。
さあ、ここでアリスはどう動くか?斧槍を離さなければ斧槍と一緒に投げ飛ばされてしまい、斧槍を離せば丸腰になる。
今回の俺の戦術は『相手の選択肢を削る』だ。選択肢の多い斧槍だからこそ混乱しないように一定の『型』がある。これはアリスも例外ではなく、『刺突は斧の腹で受ける』などの斧槍使いがよく使うパターンがいくつか見られた。今回はアリスの『槍部分を使った突き』というパターンを利用したというわけだ。
アリスは『斧槍を離す』という選択をした。斧槍が宙を舞い、場外に突き刺さる。だがアリスの判断はやや遅かったため上体が前にほんの少し泳いでしまっている。
アリスが体勢を立て直す前にその華奢な首に杖を優しく触れさせ、俺は動きを止める。動きの止まったアリスの顔や首から一気に汗が噴き出す。
「『王手』だな」
「えへへぇ、『投了』だね♪降参だよ!」
『そこまでっ!!第三試合はトモヤ選手の勝利じゃ!!』
イィエアアアァァァーーーー!!!
俺が杖を引くとアリスはペタンと女の子座りでしゃがみ込み、向日葵のように晴れやかな笑顔で笑っていた。
「トモヤは強いね!全く敵わなかったよ!」
「そんなことはないだろ。投げられる直前に突起部分(斧部分の反対側についている)で刺そうとしてたくせに。さっさと立てよ」
「え~っとぉ~。実はその・・・・・・。腰が抜けちゃってね。手を貸して貰えると嬉しいんだけど・・・・・・」
仕方がないので肩を貸して起き上がるのを手伝ってやる。
「あっ・・・・・・」
「嫌か?」
「そっ、そうじゃないんだ!ただその・・・・・・。うぅ、なんでもないよぅ・・・」
アリスの顔が赤くなっている。
「惚れたか?」
冗談で冷やかしてみると
「うぇあ!ぶrgyわmしpすかr!!」
顔はさらに赤くなり口も全く回ってない。
・・・・・・。まじかよ・・・・・・。
お姫さま抱っこはしない!なぜかって?片手に杖持ってるからですよ(*´Д`*)




