2 異世界について
「『カルクイナ』という世界の『龍人』よ」
女性は笑みを浮かべて俺の質問に答えてくれた。だがしかし
「どこだよそこは。『龍人』ってどんな種族なんだ?」
女性はこれ以上ないくらいにニコニコだ。やっと自分のペースになってきたのが嬉しいのだろう。
「ふふっ、『カルクイナ』は地球で表すとだいたい中世位の文明が多いわね。1年は365日、1日は24時間、地球と殆ど同じよ。魔法があるせいで機械系の発達が遅くなっているの。ああ、ステータスも数字で表されるのよね~」
だんだんと言葉が崩れてきた。うん?ちょっと待てよ・・・。
「魔法とステータスだと!?」
重要だよね。うんうん。
「そうよ。基本的にその属性の適性がないと使えないの。ステータスはあなたがいた世界のゲームとかで使われているものに近いわね」
だいたい分かってきた。テンプレだな、うん。
「そうよ~。あとは『龍人』についてね」
そうそう、なんだか強そうな種族だ。
「そりゃあ強いわよ。『龍』の亜人だからね。種族的に魔力量も防御力も高いわ。まあ『何の龍』かによってだいぶ変わるけど」
水龍、土龍、火龍とかかな?
「火龍じゃなくて炎龍だけどね。だいたい合ってるわ。」
種族による対立はあるのかな?
「基本的にないわね。お互いの種族の特徴を尊敬してる感じよ。勿論、人族もね」
よかった。
「まあ個人の意識までは分からないけど・・・・・・」
「それは当たり前のことだと思っているよ」
女性は少し安心したようだった。
「ああ、それからあなたは私たちの不手際で死んでしまったから何か特典をあげるわ。なにがいい?」
そうだな・・・・・・。
「死ぬときに幸せだったと思える人生を送りたいな」
あれ?なんだか惚けてるぞこの人。
「おい、大丈夫か?」
あ、動いた。
「え、そんなのでいいの?チートとかいらない?無限の魔力とか、まあそういうのは無理だけど・・・」
強すぎる力は無駄な厄介事の種になる。俺は平和に暮らしたいんだ。
「『龍人』ってだけでも十分なんだよ」
「分かったわ。その代わり、残った善行ポイントをステータスに反映するわね」
なんだよ善行ポイントって。聞いてないぞ。
「まあいいじゃない。あとは向こうの世界で会話できるようにしてあげる」
それは素直にありがたい。ああそうだ、これだけはお願いしておきたい。
「追加で、離乳食になるまでは『新城 友也』の記憶を封印とかしてもらえるか?」
さすがに赤ちゃんプレイは勘弁してほしい。
「分かったわ。サービスよ♪」
ノリノリだなこいつ。
「ああそうだ。私の名前は『※※※※※』よ。これでも偉い天使様なんだからね。あなたは面白いから『ラフィ』と愛称で呼んでちょうだい」
手を腰に当てて威張る女性、ではなくラフィ。威厳を出したいのかもしれないがはっきり言って可愛いだけだ。ぱっと見クール系美女なのに喋ると可愛いとか、いいな。
「うっさい!早く行け!」
薄れていく視界のなかで最後に見たラフィの頬は、うっすらと赤かった。