18 突然の再開と女の意地
予選終了の合図があったので『龍翼』を解除して地面に降りる。ソフィアに衝撃がいかないように衝撃を足腰でバネのように吸収する。だがしかし、ソフィアが俺の背中から降りる前に腹部に何かがぶつかり、思わずよろめく。
下を向くと一人の少女が膝立ちの状態で俺の腹に抱きついている。身長は立てば俺と同じくらい(約150cm)、栗色の肩に掛かる程度のボブヘアーそして※※※にダイレクトアタックしている二つの御山。その御山の標高は実に富士山に勝るとも劣らない!これほどまでに巨大で凶大なモノは15歳以下という区切りでは前世と今世を合わせてもただ一人。だが、彼女がこの世界にいるとは思えない。
少女が顔を上げる。優しげな瞳と目が合い、離すことができない。顔の造形は包容力があり、気弱そうな印象がある。その一方で瞳の奧には燃えるように熱い魂を幻視できるほどの力強さがある。間違いない、前世での幼なじみ『菊池 藍』だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
予選が終了してから本戦(?)が始まるまでの休憩時間は約15分。俺を含めた6人にはそれぞれ個室が与えられ、そこで休憩をする・・・・・・。本来ならな。現在、俺に割り当てられた部屋にはソフィアと藍がいる。ソフィアは初めから腕にひっついていたので仕方なく、藍は後から部屋に訪ねてきたので立ち話もなんだからと招き入れた形だ。
俺は藍に気づくことができたが藍が俺が『新城 友也』であることに気でついているかは分からない。
なにせ俺は転生したせいで身長も体重も、なにより顔立ちが変わってしまった。藍が部屋に来た理由は不明だが今は十五年ぶりの再開を素直に喜ぶことはできない。
「お久しぶりですね。とも兄」
藍は目に涙を溜めながら、嬉しそうに言った。どうやら気づいていたらしい。
「ああ、久しぶりだな、藍。見知らぬ男の個室に訪ねてきたんじゃないかと不安になっていたよ」
「生憎、そんなに軽い女ではないのですよ」
「確かに、近所の同級生からの告白を『あたしはもう操を立てているので』って言って断ったくらいだからな。小学生の頃だったから周りの奴らも『操を立てる』の意味が分からなくて混乱してたっけ」
「見てたんですか!?それなら『俺の女に手を出すんじゃねえ』とか言いながら助けてくれても良かったじゃないですか!?」
こいつは昔からこうだ。なにかと俺に彼氏面をするように言ってくる。慕ってくれるのは嬉しいがこいつは15歳のお子様なくせに色気があって何気ない仕草にドキリとすることも少なくない。まして今では年齢も近く、『年下だから恋愛対象ではない』という言い訳も難しい。
正直なところ俺が勘違いをしないために控えて欲しい。今言ったら泣くかもしれないから言わないがな。
そんなことを考えていると隣に座っていたソフィアに袖をチョイチョイと引かれた。
「トモヤ、仲がいいみたいだけど、この人だれ?」
そういえばまだ紹介をしていなかったな。
「こいつは『前世』での幼なじみのラン・キクチだ」
この世界では名前が前で名字は後ろに付く。この国では名字を名乗るのは成人してからが一般的なので俺やソフィアは名字を名乗らない。
「もう成人してる?」
だからソフィアが藍にそう聞くのはそこまでおかしいことではない・・・・・・のだが・・・・・・、ソフィアさんや、藍の胸部装甲を見ながら聞くのはやめなさい。
「い、いえっ。15歳なのでまだ成人はしてないですよ!?」
ソフィアが真っ白に燃え尽きたかんじで俺に寄りかかってくる。恐らくきょういの格差に絶望したのだろう。狼人族は戦闘に特化した種族なので体に脂肪はつきにくい。そして胸は脂肪の塊。あとは・・・・・・、わかるよね?これ以上は俺がソフィアにナニをされるかわからんので黙っておく。
「・・・ない」
ソフィアが何かを呟いた。
「トモヤは渡さない!」
いきなり何を叫んでるんだ!?この個室は隣との壁がそこまで厚くないから下手したら周りにも聞こえるぞ!?
「あたしは前世からとも兄と一緒でした!」
「所詮は前世の話!私は今世で15年間ずっと一緒!あなたは今のトモヤを全く知らない!」
「「ぐぬぬぬぬぬぅ!!」」
「お、おい二人とも、一旦落ち着k「「タラシは黙ってて(ください)!!」」あ、はい」
どうしよう。
コンコン
「間もなく本戦が始まるのでステージにお集まり下さい。」
た、助かった。取りあえず今は一時休戦だな。
「ほら、早く向かうぞ」
「くっ、あとは拳で・・・・・・」
「かまいませんよ」
ソフィアがいつものように右腕にくっつくと藍が左腕にくっつく。あ、あのぅ藍さん・・・・・・。柔らかいモノが腕に・・・・・・。
「むう・・・・・・」
ソフィア、胸を押し付けるな・・・・・・。お前が魅力的なのはわかってるから・・・・・・。正直なところ、ちょっと痛いです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
さて、右腕のちょっとした痛みに耐えながらステージに戻ってくるとすでに他の三人は集まっていた。観客席は学生たちで満席だ。ステージ中央に立った学園長が声を張り上げる。
「本戦出場者六名が揃ったので本戦を始めるぞぉ!!」
イィエアアアァァァーーーー!!!
会場全体が揺れるほどの大歓声。腹の底から揺さぶられるようだ。
この感覚は・・・・・・、嫌いじゃない。
ついつい口角が上がり笑みがこぼれる。
「本戦は1対1の個人戦!それぞれで勝ち残った3人のうちランダムで2人が戦う!そして最後の2人で決勝戦だ!ルールは予選と基本はおなじだ!分かったかクソガキどもぉ!!」
イィエアアアァァァーーーー!!
テンションマックスだな。かえって冷静になるわ。
「最初に戦う2人はぁ~!?」
「『眠れる狼』のソフィアと『フレンドリーファイア』のラン・キクチだぁ!!」
イィエアアアァァァーーーー!!
「続いて2組目!」
「『絶対なる盾』のアイゼンと『光る剣』のセイジュ・フタバだぁ!!」
イィエアアアァァァーーーー!!
「最後の1組!」
「『天真爛漫』のアリスと『リア充の片割れ』のトモヤだぁ!!羨ましんだよ、こんちくしょう!!!」
ソウダソウダァァァーーーー!!!!!!!!!!!
おい、ちょっと待て。俺のときだけ歓声がおかしかったぞ。紹介もな。
「名前の前に付けたのは二つ名だ!俺の独断と偏見で付けたものだが気に入ったなら皆で呼んでやれ!!」
リア充ノ片割レェェ!!爆ゼロォォ!!
あ゛ぁ゛!?
ちょっと周りを睨んだらヤジが止まったな。静かなのはいいことだ。
「じゃ、じゃあ。第一試合から始めるぞ!他の者はステージから降りt
『このバッカモォン!!』ドコォ!!
学園長が指示を出そうとしたとき、上から学園長が降ってきた。ステージにいた学園長は降ってきた学園長に殴り潰されている。
『お、親方ぁ、上から学園長がぁ』ってネタをやりたいが今は自重する。というかどういうことだ?学園長が二人?
「貴様はなぁにワシの真似をしておる!?生徒達から聞いたがポーズをとったり好き勝手してくれたようじゃのぅ!?今月の給料は期待しておれ。アホンダラァ!!」
「ひえぇ!お、おゆるしをぉ」
「さっさと元に戻れこのバカたれぇ!!」
潰されているほうの学園長の姿が揺らぎ、鎧を着用した若い男になった。
「こやつは元聖騎士のアイガスじゃ!ときどき誰かに化けたりしているから気を付けるようにのぅ!」
やっぱり本物の学園長の声圧ヤバいな。近くで聞いたら鼓膜がビリビリする。
「これより、本戦第一試合を開始するぞい!該当選手以外は選手控え室で見ておれ!」
さて、ソフィアと藍の試合だ。楽しみだな。
次回!!『19 ここでヤらなきゃ女が廃る!』(サブタイは予定です。変更になる可能性が高いのでご理解とご協力を・・・・・・。)
銀髪蒼眼の子に言えって言われたんです。嘘じゃないです信じt・・・・・・。サクッ