16 状況把握
遅くなりましたー!
重厚な扉がゆっくりと開き、反対側に立つ人々が見えてきました。
一人の少女を中心に半円を描くように立っていますね。一番外側に全身鎧を着込み、頭には兜(ヘルム?)をかぶった騎士が10人、直立不動で立っています。1列内側には4人の少女たち、可能な限り動かないようにしているようですがかなり疲労しているらしく、足元がふらついています。中央にいる少女は他の少女たちよりも疲労しているらしく、薄い水色の長い髪を揺らしながらも必死で倒れまいとしていることが分かります。
周りの少女たちは殆ど装飾品を付けていないのに対し、中央の少女は首飾りや腕輪などを付けているのでそれなりに立場がある人物なのでしょうね。
「召喚に応じて頂き感謝致します、勇者様方。私は『聖龍共和国』所属の聖女、メイア・ウォル・シエルと申します」
この時点で判明したことをまとめておきます。
1.あたしは彼らの言語が理解できる。
2.『共和国』ということから民主主義の考えが浸透しているらしい。
3.部屋に使われている石から、一定の規格で石を切り出す技術がある。
4.服から、絹またはそれに類似する布を作る技術があり、同じデザインの製品を作る服飾技術もある。
5.『召喚に応じた』と言っているが応じた覚えがない。
6.『聖龍共和国所属』ということから、他国所属の聖女及び勇者のいる可能性あり。
とりあえずこんなところですかね。返事は自意識過剰のキモイ奴がするでしょうし放置しています。
「あなた達は何者だ。僕達を元の世界に返せ!」
ほらね?
「申し訳ございません。私共に出来ることは『召喚』であり『送還』は未発達の分野なのです」
こちらも予想通りです。テンプレ過ぎて欠伸が出そう。どうせこの後『魔王を倒せば元の世界に戻る方法が』とか言うんでしょう?
「ですが誓約書にはしっかりと元の世界に戻れないことが書かれていた筈です。召喚に応じた勇者様はどなたですか?」
あれ?予想が外れてしまいました。
「誓約書?誰だそんなのに同意したやつ」
意外ですね。バカが同意したわけではないようです。だとすると誰が同意したかは絞られてきますね。さて、そろそろ大根芝居でもしておきますか。
「そんなことよりも、帰れないっていうのはどういうことかしら」
これは彼が疑われないための布石。上手くいけばあたしに疑いが向くはずですが・・・・・・。
「そのままの意味で御座います。『召喚』はただでさえ高難易度、ましてや上位魔法に位置する『送還』を扱える者自体が少ないのです。とてもではありませんが『勇者送還』の研究ができるほどの人員が確保できません」
一気にまくしたてて来ましたね。表情や抑揚、仕草などから虚実でないことは明白。周囲の騎士や神官のらしき人たちからも違和感はありませんので暫定的にではありますが信じる事にしましょう。
「僕達をどうするもりですか。わざわざ呼び出すということは何か目的があるはずだ」
ふむ、あたしの発言はスルーですか。『人狼遊戯』なら確実に失言になるレベルだったのに。まあ馬鹿ですからね。仕方ないですね。
「私共が求めるのは勇者様です。目的は勇者様にしかお話しする事が出来ません。勇者様であることはステータスで確認が出来ます。ステータスの開示を念じてみてくださいませ」
やって見ますか。『ステータス』
名前:菊池 藍 15歳
種族:人間
レベル:23
体力値:70/70
魔力値:300/300
筋力値:40
防御値:70
俊敏値:67
器用値:200
知力値:400
幸運値:283
スキル
猫被りLv.18 雷撃魔法lv.1 算術lv.24
ユニークスキル
魔力共有 魔力貯蔵庫 鑑定
称号
勇者召喚に巻き込まれた者
時空を超えた愛
・・・・・・。
最後の称号は何ですか!?