9 学園生活の始まり
俺は今、大きな門の前に立っている。
『聖龍共和国立 アルティミア学園』
門の上部に掲げられた学園名から、ここが目的地だと分かる。しかし・・・。
「貴様!学園に何の用だ!」
やたらごっつい門番のおっさんに止められています。
「今年度からこの学園に通うことになったトモヤと申します。よろしくお願いします」
「ふんっ。学生なら手帳を持っているはずだ。早く出せ」
俺が二人分の手帳を出すとおっさんは目元を緩ませ横に退いてくれた。
「変な態度ですまなかったな。毎年この季節に学園に潜り込もうとする奴が後を絶たなくてな。気が立ってしまうんだ。ようこそ、アルティミア学園へ」
おっさんの横を通り抜け、大きな門をくぐるとその先には共和国内最大の学園『アルティミア学園』だ。ここで20歳の成人まで学ことになる。
案外自然の多いことに驚きつつ、俺は後ろに顔を向けてそこに隠れていた少女に話しかける。
「おい、もう大丈夫だから隠れなくてもいいだろ?」
「わかった」
俺の後ろから1人の少女が姿を表す。僅かに青みがかった綺麗な銀髪は頭の後ろで1本に纏められ、風に流され横に靡く。サファイアのような透き通った蒼い目はやや垂れ、僅かにはにかんだ口元と合わせて柔らかな印象を与えている。俺の腕にくっついているせいで当たっている胸は15歳にしてもややささやかだが、それもあって幼い印象を受ける。背は130cm程度だ。何よりも目立つのは狼耳と尾だろう。彼女は狼人族だ。
「ソフィア、寮は男女別だから一緒にはいられないぞ?大丈夫か?」
こいつは『ソフィア』。実家の隣の屋敷に住む幼なじみだ。小さい頃から一緒に遊んでいたせいで随分信頼されている。こいつはかなりの人見知りのようだ。しかし、さすがに俺が女子寮に行ったり、ソフィアが男子寮に来るわけにはいかない。
「その分昼間くっつく」
ああ、さいですか。
「そうか。まあとにかく、まずは入学式の会場に向かうか」
「ん」
こんな感じで学園生活がスタートする。