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勉強会

慌ただしく過ぎ去ったランチタイムも終わり、奥の居住スペースに、可愛い生徒たちが夏休みの宿題を持ち寄り集まっていた。

先生役の後藤 晃司は、一年生の山口 美麗のプリントをコピーさせてもらい、三宅 健太の前に置いた。


「健太君?とりあえず、このプリントやって行って、分からんトコあったら兄ちゃんに言うてくれるかな?」小学生の家庭教師を経験している晃司は、慣れた感じで健太に声を掛けた。

「ウン、やってみる」山崎の家に来てからと言うもの、山崎の明朗で何事にも前向きな姿を見て来た健太は、スッカリと前向きで、自分の意見も言えるようになっていた。


「出来たけど、こんでエエ?」

思いの外、早くプリントを解いてしまった健太に晃司は舌を巻いた。そして、全問正解だった。

「エエぞ!健太君、じゃあ次はこれやって見よか?」

次いで、二年生、三年生と健太は次々と解いて行った。

「健太君?ジブンいつくらいまで学校に行っとったんや?」思っているよりも学力が高い健太を怪訝けげんに思った晃司は、ふと聞いてみた。

「三年生の十月くらいまで」

なるほど、勉強が元々出来る子ならば不思議な事ではない。問題はこの後の四年生だ。

「じゃあ、難しいかも知れへんけど、これやって見よか?」やや恐る恐る四年生のプリントを出してみた。


「晃司兄ちゃん?この問題割り切られへんやん?」算数の問題を解いていた北村 政宏が晃司に質問してきた。

「んー?どれどれ…何や、アホやなぁ。ここの引き算のトコで十の位から借りて来てんのに8のまんまやんか。ここを7にしたら?」

「あっ!ほんまや。オレ引き算で間違ごうてもうてるやん」

「兄ちゃん?この花の部分て何やったっけ?」

今度は山口 克也が理科の問題について聞いて来た。

「これ何や?」晃司は両腕を抱えブルブルと寒そうな仕草をして見せた。

「ガクガク?…あっ!"がく" や!」

「せやせや、よう分かったな」晃司は克也の頭を撫でてやった。

「お兄ちゃん、面白おもろい!」

様子を見ていた妹の美麗が腹を抱えて "ケタケタ" と笑った。

「ウルサイねん!シバくぞ」克也は妹に向かって右拳を突き上げた。

「コラ!喧嘩はアカンぞ。勉強に集中や」

晃司は克也の頭を"クシャクシャ"しながら叱った。


しばらく、こんな調子で勉強会は進んで行った。

しかし、ふと、晃司は一向に質問をして来ない健太を不思議に思った。

「健太君?出来てるか?」

晃司は、そっと健太のプリントを覗き込んだ

「ウン…一応…」健太は懸命にプリントに向き合いながら答えた。

「えっ?出来てるやん。何で?習ってへんのんと違うん?」晃司は、とにかく驚いた。絶対に出来るはずがないと高をくくっていたのだから無理はない。

「ウン…ウチに居って外に出してくれへんし、TV見たら叩かれるし、教科書読むくらいしかする事なかったから、ずっと教科書読んでた」

それにしても、凄すぎると晃司は思った。

いくら教科書ばかり読んでいたと言っても、小学生なら分からない所は必ず出てくるものだ。しかし、健太は読んでいるだけで、内容まで理解していたのだ。

「何ちゅう読解力や。天才やん…」

晃司は目が点になって呟いていた。

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