初めての友達
ケイドロ=子供達の遊びで警察と泥棒に別れてやる鬼ごっこのような遊び ちなみに私の子供の頃は、探偵と盗っ人に別れて、探偵と呼んで遊んでいました
いっこも=一つも、一度も、一回も
そん代わり=その代わり
食堂も休みなので克也と健太は朝食後も昨夜の続きでTVゲームを始めた。やはり子供同士は馴染むのが早く二人はすっかり友達同士のようだった。それを見た山崎はここぞとばかりに克也の学校の友達も呼ぶように促した。
始めは克也も少し渋ったが山崎はこう言う時の子供の対応も承知していた。昼にオムライスとコーンポタージュを、おやつにホットケーキを提供すると約束した。
するとやはり現金なもので週末に突如訪れた友達同士のプチパーティーに喜んで友達らに連絡した。
始めは健太が他の子供たちと上手く溶け込めるか心配した山崎だったが、昼食のオムライスを期に一気に溶け込んで行った。
「木戸のオムライスにケチャップで名前書いたるわ」ガキ大将っぽい佐川 雄平が身体が小さい木戸 孝則のオムライスにケチャップをかけてやった
"アホ"
「何やねん!何でアホやねん!」孝則は文句を言いながらスプーンでケチャップをグチャグチャに混ぜて字を消した。
そのやり取りを見ていた健太は今まで見せた事のない会心の笑顔で "ケラケラ" と笑った。
「ほなら、お前も書いたるわ」今度は雄平は健太にもケチャップをかけてやった。
"かしこ"
「何でボクがアホで健太君がかしこやねん!」
口を尖らせて拗ねる孝則を見てまた健太が笑った。
その姿を見ていた山崎は目頭が熱くなるのを感じた。
食事が済み、四人は "公園で遊んで来るわ" と言って出掛けてしまった。山崎は四人にそれぞれ二百円づつのお小遣いをやった。
「気ぃ付けてな!外は暑いねんからちゃんと水分取るんやぞ」楽しそうに仲間たちと出掛けて行く健太を山崎は微笑ましい気持ちで見送った。
三時になると今度はホットケーキ目当てに帰って来た。すでにホットケーキは焼き上がっていて、バナナと、ミカンと桃の缶詰と牛乳でミックスジュースを作ってやった。
「健太君、足遅いわ!ケイドロですぐ捕まるし警察やったらいっこも捕まえられへんやん」雄平が辛辣な言葉で健太を罵った。
「うん…ゴメン」健太はガッカリして返した。
「雄平!スマンな。健太はな、訳あって今まであんま運動とか出来んかったんや。これからいっぱいメシ食っていっぱい運動して行くさかいにこれからも仲良うしたってくれるか?」山崎は賺さず子供たちの会話に口を挟んだ。
「そうやったん?ゴメン!知らんかったから…そん代わり平日の夜、オレもここ来てエエ?」克也からスマイル食堂の話しを聞いていた雄平は前々から自分も来たいと思っていた。しかし切っ掛けが分からず迷っていたのだ。
「おぅ!雄平も孝則も来たらエエ。ちゃんとお母ちゃんに言うて二百円握り締めてな。後一回お母ちゃんにウチ来てもろてな」山崎は、初めてスマイル食堂に来る子供には、親がどんな所でどんな人間に、たった二百円と言う値段で腹一杯食べさせてもらっているのか心配させないように一度来てもらって自分の人間性や人となりを見てもらうようにしていた。
「ヤッター!健太君これからもヨロシクな」子供はやはり現金なものだと思いながら山崎は子供達のやり取りを見ていた。