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決意

どないして=どうやって

よう言わんわぁ=何を言っているの?所謂いわゆる照れ隠し

夜の八時をぎ、山崎は加藤 雅代の愚痴を聞きながら、後片付けを始めた。


「こないだ、新作の米粉パン使った和風のパン、作ってんやんか ほなら、ウチの旦那ダンナ "和風なんか、洋風なんかハッキリせぇ" って言いよんねん!どない思う?」

雅代は口をとがらせていながらも、目だけは幸せそうに笑っている。

「まぁなぁ…ダンナさんも雅代さんの事、信頼しとるからそないな憎まれ口叩けんねんやろ?言うたら、憎まれ口叩いても自分の事、嫌わへんって思てんとちゃうかな?」

大概、主婦たちは素直になれずに照れ隠しの為に強がりを言うだけの夫の本心を山崎に代弁して欲しいのだ。

「話し変わるけど、何なん?いきなり克也君を泊めるって?」雅代は先ほどから気になっていた山崎の本心について聞いた。

「ウン…ちょい重たい話しやねんけどな?健太って多分やねんけど生まれてこの方、子供らしい遊びやら勉強やらを経験してへんと思うねん。もしかしたらやけど、同年代の子とのコミュニケーションもロクに取ってぇへんかったんやと思う」ここまで言うと山崎は首から掛けたタオルで眼鏡の下の目をぬぐった。それを聞いた雅代は何だか言いあらわしようのない怒りを覚えた。

「そんなんありへんやん?じゃあ、あの子の親は何してるん?どないして育てて来たんよ?」キチンと愛情を持って子育てをして来た雅代だからこそ、その語気は強まった。

「それは、分からん!今も翔平が動いてくれとる。ただ、何があろうと、どんな結末が待ってようと、健太はオレが守る。そう決めた!」今まで、沢山の子供と接して来た山崎を雅代たちは、ずっと見守って来た。しかし、今夜のような山崎を見るのは、雅代にとっては初めての事だった。

「そうか…何や?カズちゃんらしいなぁ!まぁ、何かあったらいつでも言うてきて。何の力になれるか分からんけど、皆んなもおんなじ気持ちやと思うから…」雅代は目をまぶしそうにしていた。

「おおきにな、雅代さん。おっ!もうこんな時間やんか。早ように帰らんと愛しのダンナさんが心配しよんで」山崎は冷やかすように言いながらも、はにかんでみせた。

「よう言わんわぁ。でもまぁ旦那の本心も聞けた事やし…ほならカズちゃん、おやすみ」平静をよそおっていながらも雅代が上機嫌なのは分かった。


片付けを終え、奥に引っ込んだ山崎は、ゲームコントローラーを握り締めたまま克也と寄り添うようにして眠る健太を見つけた。

「フッ、楽しかったか?健太…」山崎は優しさを瞳にたたえて二人に毛布を掛けた。

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