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チキンチャップ

「健太!おはようさん。早よ起きぃ」山崎 和浩は昨日まで "ボン" と呼んでいた少年の名前を呼べる事が嬉しかった。

「なぁ、健太?お前の好物は何や?」山崎は名前を名乗ってくれた事で三宅 健太との距離が縮まった事を感じて、好きな物を腹一杯食べさせてやりたいと思った。

「ラーメン」それでも健太はうつむ気味ぎみに答えた。

「ラーメン?何ラーメンや?」俯いてはいても、やっとの事でしゃべるようになってくれた事に山崎はワクワクしていた。

「袋に入っててお湯入れてふたして二分待つヤツ」健太はラーメンを作る仕草で懸命に答えた。それを見た山崎は驚いた。そして納得した。考えてみれば分かる事だ。やたらとけたこの身体を見れば当然の事だろう。恐らくは健太は産まれてこの方、今までロクすっぽう、まともな食事などした事がない!そんな事は想像に容易たやすい事だった。それを思うと山崎は胸が一杯になった。

「そうか…健太!オレがお前の食うた事ないような美味うまモン食わしたるからな」そうは言って見たものの、問題はアレルギーだ。今までにもアレルギーに対して無知だったスマイル食堂を始めた頃の山崎は、一人の子供を危ない目に合わせてしまった事があった。子供たちを助ける為、親を応援する為に始めた事だったが、そのような事があり一時期は辞めてしまおうとも考えた事があったのだ。そんな時に手を差し伸べてくれたのが保育士の経験を持つ後藤 史恵だった。

「エエか?アンタ!知らんかった事は勉強したらエエねん!アンタがやってる事は決して間違まちごうてへん!ウチが協力するから一緒に考えて行こ?なっ?」それが最初に協力する切っ掛けとなった。アレルギー騒動があり、山崎のやっている事を偽善とののし懐疑的かいぎてきで、変質者呼ばわりまでしていた者たちをせ、主婦たちの支援の輪を拡げてくれたのが史恵だった。それ以来、史恵の好意に応える為にも山崎は必死に勉強し史恵ともどもメニューを考え出し、今の形が出来上がったのだ。


「とりあえず、チキンスープが入っとるから鶏肉カシワはOKやなぁ?後…めんがあるから小麦粉も大丈夫っと」こうして山崎はチキンチャップを作った。

「健太!出来たぞ!さぁ、食べ!」健太は最始は恐る恐ると言う感じでチキンチャップを口に運んだが一口食べると顔が一気に明るくなり、むさぼるように食べ始めた。

「ほら、健太!誰も取らへんからゆっくり食べ!」そう言いながらも山崎は健太の人生に思いを巡らせて笑顔でありながらその目尻には光るものがあった。

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