交番巡査の報告
イヤな=話題を変える為の副詞
"あのね"の様な意味
ゴチんなります=ナインティナインの番組でお馴染みの言葉 ご馳走になります
も一辺=もう一度
おちょくっとったら=バカにしていたら、からかっていたら
「おぅ、翔平か?何や?こんな時間に」山崎は少年の氏名が分かった事に感動して西川巡査に頼んでいた事をすっかり忘れていた。
「何やって…カズさん、頼んますわぁ。今日の朝の事の報告ですやんか」西川巡査は兄貴分の言葉にガッカリした。
「おぅ!スマン、スマン、スッカリ忘れとったわ!でっ?何か分かったんか?」山崎はこの流れで、吉報が聞けると期待を込めて聞き返した。
「イヤッ、スンマセン!それが、近隣の署にも何件か問い合わせたんですけど、それらしい通報とか捜索願は出てなかったです」西川はズボンの後ろポケットから出したハンカチで額の汗を拭いながら答えた。
「何やねん。何も分からんかったんかいな!頼んないのぉ」山崎は弟分に関西特有の "ツッコミ" のように揶揄した。
「そら、ないですわ!これでもちょっとはカズさんの力になろうと思て頑張って動きましてんで」西川はまるで少年のように口を尖らせて返した。
「スマン、スマン。夜勤明けでしんどかったやろうに。お詫びやって言う訳やないけど、まぁ何か食ってけや」山崎は雅代に注文を取るように目配せしながら言った。
「やったぁ、二百円でメシ食えるッスか?」西川は、またまた子供のように、はしゃいだ。
「アホか?お前からお代何か取るか?タダで食ってけ」山崎は西川とは長い付き合いのせいか、西川の好みが分かるようで、冷蔵庫からフライ衣をつけた豚ロース肉と、生姜とニンニクを効かせた醤油ダレに漬け込んだ鶏肉を出してきた。
「スンマセンッス、ゴチんなります。でも何かカズさん…ご機嫌ッスね?」西川は自分に力がないばかりに朗報を聞かせてやれなかった割りに、山崎が上機嫌なのを訝しんだ。
「イヤな?ボンが自分の名前、言うてくれたんや。三宅 健太や!スマンが、この名前で明日でもエエからも一辺調べてくれへんか?」山崎はこの流れに乗って、健太の件が一気に解決してくれる事を願った。
「三宅…健太…ですね。分かりました。今度こそ何かしらの情報を仕入れれるように頑張りますわ。トンカツと唐揚げも食わせてもらえますしね」西川はメモを取りながらも悪戯坊主のように、はにかんで見せた。
「翔ちゃん、あんまし揚げ物ばっかし食べてたら、またお腹が出て来るで」政宏が少し突き出て来た西川のお腹を弄りながら巫山戯てきた。
「何やと?お前、大人をおちょくっとったら西川巡査が逮捕するぞ!」西川も巫山戯返して答えた。
「イヤー、職権濫用やわー」本当に悪ふざけさせたら天才的な政宏だった。
「フーッ、ほんまどっちが大人か分からへんわ」山崎はいつまでも少年のような心を持つ西川に呆れ返ったように呟いた。