田舎娘の学園入学 共通1
「入学拒否!?」
「そう。入学式当日に道に迷って別の学校にしたんだって」
「……代わりの生徒を探してくる!」
魔法界ミーゲンヴェルドの大陸フェルランドに、とある村がある。
超ド田舎で教育の行き届かないそこに一人の少女が暮らしていた。
「エルタンジェ、今月の御給金よ。このごろ頑張っているからアップしといたわ」
「ありがとうございます!」
「アナタも学園入学を控えているのに、大変ね」
少女エルタンジェは絵に描いたような大家族にして貧乏な家庭に生まれた。
いかなる理由あれど、この国では16から魔法学園で修行することを法律で決められている。
学費は無料で上手くいけば将来安定した生活ができるチャンス。
しかし、その間はバイトができないので、とても困っている。
「東ではよく玉の輿っていうけれど、こっちでは持参金が要るのよね」
仕事仲間のジェシカが話にわり込む。
「明日の生活もままならないのに結婚は無理ね。特にこの村の男は働かないし」
「ああ、玉の輿といえば、お隣の音楽国家シャープナーバでは
歌を披露してお気に召されれば大公妃になれるそうよ」
思い出したように酒場の女主人が言った。
「へえ、音楽家しか移住権がないのだから、当然という印象だけど……」
「ためしに教会で歌おうかしら」
あの教会は誰もいないし、声がよく響く。
■■
「……に身まかりし、我らを弔え! 恋い慕う君の背に、涙で問う
それが、定められた終焉なのか?」
幼いころに村へ来た音楽団の歌の中でこれが一番好きだった。
珍しい娘だから特別にと、作詞家は楽譜を書いて渡してくれた。
歌を終えて、その場の椅子に座る。背後からパチパチ、と拍手が聞こえた。
「素晴らしい歌だった。ところで、君は入る学校は決まっているかな?」
エルタンジェは事情を話すと、バイトの許可を条件に
彼の教鞭をとるプリマジェール魔法学園への入学を承諾する。
■■
「王都の魔法学園……!」