∮王女騒動 共通 1章1~2
壁の崩れる音が、耳をつんざいた。
「キャアアアアアアア」
――――なにがおきたの?
建物が崩れ、人がたくさん倒れている。
「姫様、お逃げください!」
私は円盤の中へ運ばれた。
そして、わけもわからないままそれが起動した。
―――――姉さま兄さまはどこにいるのだろう?
――――――――――
星がひとつ、神の腕へ消える。
幾多の星が融合し、人は真理へ近づく。
人知を越えるもの、恐れを成して逃げるもの。
神の戯れに影すら無く。
●開幕
私には幼い頃の記憶がない。
道で迷っていたところをパトロール中の警察官に救われて私はその警察官の家族に養女となり、十年が経ち、丁度私が高校生になる頃に異なる星と地球はリンクした。
偉い人の決定で、別の星にある学園で学ぶことになる。
「ここが異星の中心ね…」
太陽系の惑星が地球と太陽と月を除き、全て融合されて、いるという。
異文化、というやつなのか様々な民族衣装の人が歩いている。
地球の文化の違いは機密に訪れていた宇宙人から来ていると言われていたが、それをいま実感した。
見た目は地球人変わらない。
想像していた見た目とは違う。
もっとグロテスクなエイリアン風を期待していた。
「地球からいらしたお嬢さん、もしや貴女は学園に通う最中なのでは?」
金髪の、まるで中世時代の貴族のような格好の男と、黒髪の優美な男性がいた。
「私も学園に行く所でした…宜しければ馬車にどうぞ」
「あ、ならお言葉に甘えて…」
「では、私はこれで失礼」
「はい、学園でお会いしましょうフルメド先生」
「私はヴィサナス=キノエビアン公爵家の出です」
「…冥晴夏妃陽です」
本当に貴族だったのね。
暇だから気になったことを質問してみよう。
「あの、少し聞いてもいいですか?」
「どうぞ」
「どうして私が地球から来たとわかったんですか?」
「そんなことですか?」
彼はまるで意外と言いたげな反応をする。
他に聞くことなんてないだろう。
「…まず、貴女は制服を来ていますね」
「はい、だから私が学園に行こうとしているのをわかったのでしょう?」
「少し違います」
違う、ってどういうことだろう。
「まず私は地球から代表留学生が来ることを知っていました」
「ええ…!?」
なら私を地球から来たことも知った上で話していた。
ということになるんだけど、私がその地球からの留学生だって顔写真で見たとかなのか、だいたいそれと制服がどう関係あるんだろう。
「学園に決まった制服はないのです貴女のそれは地球の制服でしょう?」
「はい」
外国なら制服がないのも珍しくもない。
異星に学園があるのもそうだが、制服があったら更に驚いただろうし。
「少し制服が羨ましいです」
「なぜですか?」
自由に服を切られるなら制服のような服でも着たらいいのに。
「皆と同じ服を来て等しさを感じることは私には出来ませんから」
「なるほど…」
彼ほどではないけど、私は警察官の義父がいるから、クラスでは少し遠巻きにされていた。
もちろん義父には感謝しているし、警察官が悪いと思うわけではない。
「学園に着きましたね」
「あの、やっぱり異星にも魔法使いっていないんですか?」
「残念ながら私は見たことがありません」
宇宙広し、といえども魔法使いはいないのか、知らないところにはいると信じたいな。
会えないのは本当に残念。
「あ、ノエビアン会長」
「…彼女が留学生?」
気さくそうな人と背中から異なる翼の生えた少年が、私というよりヴィサナスに駆け寄ってきた。
「今日のゴミ拾い終わりました!!」
は?
「後は私が最終点検に入る、二人は生徒会室で休息を取ってくれ」
「はい!!いくぞフォドル」
「…まってよウィダス」
とにかくあの二人とヴィサナスは生徒会のメンバーだと言われなくても理解した。
「すみません貴女のことを話すのを忘れていました」
「いえ優しいんですね」
というか、なぜ生徒会がゴミを拾うんだろう。
普通は作業員がやることよね。
ヴィサナスは仕事があるといい去った。
「貴女見かけない顔ね新入り?」
「ええそうなの、よろしくね。
よかったら生徒会のことを教えて」
「あら、さっそくそれを聞いちゃうの?いわずもがな、彼らはとても素敵よ」
それは聞かなくてもわかる。
「あ、君が留学生か」
「先生、生徒会がなぜゴミ拾いをしているのかとても気になります」
どうでもいいことなのになんだか無視できない。
「彼等はとても優秀でな、成績も三人が上をキープしていて…」
「かりにも生徒会ですもんね…それでなぜゴミ拾いを?」
「さあ?」
誰も答えてくれない。
普通はエリートが雑用をしていたら止めるだろう。
他の二人はさておき、ヴィサナスは公爵家の人でしょ、世界の違いならぬ星の違いなの?
「あ、留学生」
さっきの…ウィダスだったかな。
「お前、どっかで見た顔だな…」
顔をぐいぐい近づけられる。
照れるというより微妙。
「え?初対面だと思うよ」
「なんか見たことがあるというか会ったことのある顔してんだよ」
まったく心当たりがない。
私に小さな頃の記憶はないが、その間に彼が地球に、もしくは逆にこちらに私が来ていたとも考えにくい。
そもそも、当時は自由に星を行き来できる時代ではなかった。
「小さい頃に…なわけないか、地球に潜入できんのは金持ちぐらいだからな」
どこにでも身分とか貧富とかあるんだなと、しみじみ思う。
私は何事もなく、寮の部屋で就寝した。
●1章1話:洞窟のドラゴン
翌日、外に出ると―――――
「来たれ! 火の精霊マンデランダー!!」
―――――え?
ヴィサナスは魔法使いはいないって、言っていた。
目の前に一人ならまだしもたくさん魔法を使ってる人がいる。
手から火を出したり水を出したり、草を生やしたり硫酸巻いたりしている。
「すみません、あまり町中で公にしたくないので、嘘をついてしまいました」
「なるほど、学園の外には秘密ってことなのね……」
「今日は合同授業を始めます」
チームを組んでなにかをやるみたいだけど、なにが始まるんだろう。
私は空いているチームに入ることになった。
「あ、ナキヒさん」
「一緒のチームなのか」
「……」
ヴィサナス、ウィダス、フォドルのいるチームだった。生徒会なら心強い。
私は彼らに続いて森に入る。
「さてモンスターを……」
「たいへんだ!向こうの洞窟でドラゴンが暴れているらしいんだ」
「ドラゴンが!?」
ウィダスが驚いて聞き返す。
―――ドラゴンがいるなんてやっぱりここは普通の星じゃないわ。
「ドラゴンを沈めにいきましょう」
え、そんなことをしたら成績が――――
それに学生がドラゴンなんて恐竜のようなものと戦うなんて危険。
普通は先生達がなんとかするはずだわ。
ヴィサナスが洞窟に向かって走り、二人が続いていく。こんな森に私もおいていかれるのは困るので追いかけた。
“ガアアア”
――――咆哮。
洞窟内に響き渡るそれは耳をつんざく。
「いくらなんでも……」
ウィダスはヴィサナスを見る。
「これを倒せれば、私は完全になれる!」
ヴィサナスは意外と野心家のようで、一攫千金タイプのようだ。
「……」
ハーフドラゴンのフォドルは相変わらず語らないけれど、複雑な心境のようだ。
私にできることなんてない。とにかくはなれて観ていよう。
「消し去れ《イレース》!」
ヴィサナスが呪文を唱え、白光する細い円柱がドラゴンの双翼を貫く。
「……さすがは会長だ」
――――ドラゴンが暴れる。
「しまった……!」
このままここにいたら洞窟の岩が崩れてしまう。
皆撤退することになった。
ガラり、岩が上から落ちてくる。ヴィサナスがそれを剣ではじく。
「すみません君達を巻き込んでしまって」
ヴィサナスは申し訳なさそうに謝罪した。
「無事だったし、結果的にはよかったじゃないんですか?」
洞窟の入り口は閉じたし、翼を負傷したドラゴンは当分出てくることはなさそうだ。
●1章2話:成績表
今日は電子パネルに成績ランクがはられる日らしい。私は来たばかりなので、テストを受けていないから成績表に反映はされない。
「成績表見に行かないんですか?」
「ええ、見る必要ないですから」
――――ヴィサナスは生徒会長なのに、成績に響くとか気にしないんだな。
【3年|1位ヴィサナス2位レライ3位ルセンタ】
【2年|1位ユベリス1位ミューティロギアン2位ウィダス3位カーズ4位ニルス19位コンファル154位幸200位アクアルナ389位ラヴィーナ399位ベルター400位アスリル】
【1年|1位プライデア2位フォドル3位ビッグス】
【論ヶ位ラウル】
見に行くと、学年わけで、一位がヴィサナスで二位がレライで三位がルセンタ。皆、ヴィサナス星人みたいだわ。
星府<せいふ>から送られてきた電子資料ヴィサナス星では表の管理者が代々ヴィサナスという名前を引き継いで、裏側を王族が管理するらしい。ちなみにレライは貴族令嬢で三位のルセンタが王子であるそうだ。
二年生ではマージルクス星人のウィダスが、賢さで有名なマキュス星人、しかも王子を差し置き二位をとっている。
ちなみに一位をとっているのはマージルクスの貴族ユベリスとマキュスの貴族ミューティロギアンらしい。
でもパネルにはミューティギロアンとあるがどちらが間違えたのだろうか?
フォドルは1年の二位か、意外だわ―――。それにしてもさすがは生徒会ね。
ゴミ拾いなんかしているからふざけているのかと思ったけど、彼等は大真面目みたいだ。