6 ルナ
俺がギルドに戻る時、流石にルナをこのままにしておけないと思い、擬人化を頼んだ。
「わかったわ。『擬人化』」
ルナはみるみるうちに人の体になった。そして俺は混乱してしまった。銀色の髪に真っ白い肌。出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる理想的な身体つき。そんなルナが裸になっていた。
「ふふふふ服は!?」
「持っていません。魔物はそんなもの身に纏いませんから。でも何故でしょう?今はとても恥ずかしいです。」
どうやら擬人化は人間の羞恥心も得るらしい。
「取り敢えずこれ羽織って。前はしっかり隠すんだよ?」
そう言って、マントを脱いでルナに渡した。ルナはそれを受け取るとそれを着て、しっかり体を隠している。
そして街に戻り、服屋でルナを着替えさせ、ギルドに入ったら今に至る。
「あの、レナさん。なぜおこっているのですか?」
「怒っている?私が?何を言っているんですか、レイさん。怒ってなんかいませんよ。ええ、初依頼ということで、心配していたら女の子を連れて帰ってくるからって怒ったりしませんよ。」
今は、ギルドマスター室に向かっている真っ最中だが、レナさんが怒っている。どうやら原因はルナにあるらしい。でも、2人は初対面だし、何故だ?
ルナはと言うとギルドの中が珍しいのか、キョロキョロしている。
そんなやり取りをしていると、ついた。
「こんこん。ギルドマスター、レイさんたちを連れできました。」
「入って頂戴。」
?女の人?ギルドマスターって髭を無造作に伸ばしたおじさんというイメージがあったからかなり驚いている。ルナさんは受付に戻るらしい。
部屋に入るとさらに驚いた。女の人なのは声でわかっていたが見た目が非常に若々しい。女子大生くらいの見た目だ。しかもかなりの魅力的なプロポーション。
「はじめまして。ここ、王都でギルドマスターをやっているローナです。ローナと呼んでください。」
俺は動揺を押さえ込み返した。
「わかりました、ローナさん。はじめまして。」
「そんな堅苦しい言い方じゃなくてもいいのよ?」
クスクス笑いながら言われた。
「わかったよ。ローナ。俺もレイでいいよ。ルナ、あいさつだ。」
「どうも、ルナです。」
「はい、宜しくルナさん。あれ?レイ、あなたソロではないの?」
「ええ。そうですよ。ルナとは祠で会ったんですよ。」
「祠で?悪いけどさすがにその装備じゃあ祠に近づいてすぐ死んでしまうとおもうんですけど?」
「あー、私は人間じゃないので。」
「人間じゃない?」
「はい、これ証拠になるかな?」
そう言って右手を差し出し、爪の部分の擬人化を解いた。するとフェンリルのそれは見事な鋭く尖った爪がそこにはあった。
「っ!擬人化!?」
「そういうことです。」
俺は本来の依頼だった魔物の異常について説明をした。
「なるほど、まぁ擬人化出来るほど高位の魔物といつことよね。冒険者が死ぬのも仕方ないわよ。それにしても袋って何かしら?」
「知らないよ?だって人間とそんなに深く関わったりしないから。」
「あなた、種族は何?」
「フェンリルだよ。凄いでしょ?」
「フェンリル!?SSランクの幻獣じゃないの!?なんであなた、レイといるのよ!?」
「何でって、ルナのご主人だから。」
「ご主人!?なんでそんなことになったのよ!?」
「ルナ、ストッ「何でって、負けたからだよ?」プ、って、言っちゃったのかよ。」
俺が止めるのが遅かったせいで、俺がSSランクの幻獣を倒す実力があることがローナにわかってしまった。ローナは驚愕している。
「・・・あなた、フェンリルに勝ったの?」
「・・・・・まぁ、一応。」
「完敗だったよ。だから、レイは私のご主人。」
「なるほどね。でも一応、ギルドに登録しておいたほうがいいわよね。人間と魔物、どちらとして登録する?」
「レイはどっちがいい?」
「やはり、人間の方がいいと思うよ?」
「じゃあ、それで。」
「わかったわ。ちょっと待って?手続きするから。」
そういうと、ローナは部屋から出てギルドカードを作りに言った。
「ルナ、どうしていったんだ?」
「何を?」
「戦ったことだ。」
「ああ。それはね、レイがこれ以上面倒ごとに巻き込まれないようにだよ。」
「要するに怒らせたらヤバいぞって、アピールするため?」
「そうそう。そういうことだよ。」
「そうか。だが、俺の戦いのこと他の人に言ったりするなよ?逆に面倒ごとが増えそうだ。」
「わかった。」
そんな話をしているとローナが戻ってきた。
「はい。これルナさんのね。それとレイもBランクに昇進させておいたわよ。さすがに実力があるのに低ランクにするのわね。ルナさんも同ランクにしてあるから。」
「ありがとうございます。っあ、おすすめの宿ってあります?」
「ギルド運営のハンターという宿屋があるわ。場所はここの裏よ。」
「ありがとうございます。それと、俺たちに関する情報を隠蔽しておいてください。」
「わかっているわ。はい。これ今回の報酬。イレギュラーがあったから1200000ゴールドよ。」
「ありがとうございます。それでは。」
「じゃあーね。」
「下でレナを呼んできてちょうだい。」
「わかった。」
俺たちは下でレナさんにローナが呼んでることを伝え、宿屋に行った。
中に入ると、おっさんたちが酒を飲んで大騒ぎしている。
大所からおばちゃんがやって来た。
「いらっしゃい。泊まりか?食事か?」
「泊まりで。」
「何部屋だ?」
「ふたへ「一部屋で。」・・・だそうです。」
「あらあら暑いね〜。一部屋で2人で1泊3000ゴールドだよ。食事は朝と晩だけだよ。」
「はい。お願いします。」
金を払って部屋に向かった。ベッドは少し大きめだった。俺は疲れたのでルナと一緒に食事をして部屋に戻った。食堂にはアージがたまたま食事をしに来ていたので俺に絡もうとするやつを諌めてくれた。
部屋に入るとルナがいきなり俺を押し倒した。
「おい!?ルナ、どういうことだ!」
「私、言ったでしょ?したいのよ。レイと。」
俺はレナが付いてくるといった時のことを思い出した。確かに、そんなことをしたいというようなことを言っていた。
「ルナ、俺はまだ子供だ。子供はまだ、その、何というか、ほら、まだ出来ないんだよ。」
そう。生殖器の未熟な子供にはできない。よし、ナイス閃きだ。おれ。
「じゃあ何時になったら出来るようになるの?」
「えっ?それは15歳くらい?」
そんくらいの時期だよなってしまった。
「そんなに待てない。子供は諦めるからその前段階まででいいからお願い。」
そうだよ!そう言われるに決まってるじゃないか!っく!不覚!
「それとも、私のこと・・・嫌い?」
少し涙目になっているルナを見ていると本当にしたくなってきてしまう。何をとまでは言わないが。
「・・・・・・・わかった。」
そう言って俺とルナは・・・・・・。
次の日、起きるとお互い裸で抱き合っていたという事だけ記載しておこう。決して最後までいっていないということも。
時は戻り、ギルドマスター室。ローナは考えをまとめていた。そして丁度思考が纏まった時にドアからノック音が聞こえた。
「入ってちょうだい。」
「失礼します。あの、レイさんに聞いてきたのですが。」
「あなたにレイの事を気にかけて欲しいのよ。」
「レイさんをですか?」
「そう。あとこれは相談なんだけど彼を王立グローリー学園に入れようと思うよ。」
「何を言っているんですか!?」
昔はこの世は大きく2つの勢力に分かれた。それがギルドと王国だ。互いに牽制し合うことによって権力の偏りを防いでいたのだ。しかし最近は皆、騎士になって貴族の仲間入りをしたいと考えるものが増え、若い人材は皆んな騎士になってしまうのだ。そのため騎士の人口が増え、勢力は傾きつつある。その牽制にレイを使おうというのだ。レイの事を気にしているレナが反対するのは当然だ。
「レナ、冷静に考えなさい。これはギルド的にプラスだと思うのだけど?」
「確かにそうです。でも、レイさんにはまだそんな力はありません。 それに、その学園はほとんどが貴族で英才教育を積んだ子供ですよ。そんなところに平民のしかも冒険者が行ったら大変なことになります。」
「レナ、それはつまり実力があればいいの?」
「まぁ、そうです。でもやはり、イジメとかに合うかもしれませんし。」
「それはレイの決めることよ?あなたが決めることではないわ。」
「・・・実力があるなら一考の余地はあるかと。」
「わかったわ。下がってちょうだい。」
「ギルドマスターは実力があると思うんですか?」
「実際あるわよ。異常なほどにね。」
そこまで言うともう何も喋る気がないというかのように書類を点検し始めた。