4 冒険者ギルド
俺は王都に来ていた。
「とりあえず武器屋のおじさんに挨拶だな。あと、研いでもらいたいし。」
俺のミスリルソードは、一年間の鍛錬により、僅かながら切れ味が落ちていた。それでも十分なのだがやはり、冒険者デビューとして完璧な状態にしておきたい。そう考えて武器屋まで来てみたが、そこにはも1人、人がいた。
「おいおい。デッド、頼むよ武器作ってくれよ。」
「お前はこれぐらいがちょうどいい。これで訓練してから出直せ。」
「こんなのは鈍だろ?デッド、頼む!」
「無理なものは無理だ。」
どうやら、俺の時みたいに剣を売ってくれないらしい。それで言い争っているようだ。というか、おじさんの名前ってデッドっていうのか。覚えておこう。っと、そんなことより研いでもらおう。
「お久しぶりです。デッドさん。」
言い争っている中、突然乱入してきた俺に対して、デッドさんは目を見開き、もう一人は訝しい視線を向けてくる。
「おい坊主、お前にはまだはや「おー!あん時の坊主か!久しぶりだな!」いって、何!?デッド、知り合いか?」
「あー。こいつが5歳の時俺の店に来てな、なかなか優秀そうだから剣をやった。」
「っな!?おい!デッド!こんなガキに渡して俺には武器を作ってくんねーのか!?」
「おい、お前は外にいろ。あとで話は聞いてやる。悪いな、坊主。うるさいのがいて。それでどうした?」
とりあえず、さっきの人は出て行った。
「これから冒険者登録をしに行くんですが、その前に研いでもらおうと思いまして。」
そう言って俺はミスリルソードをデッドさんに渡した。
「流石に筋がいいな。」
「剣を見てわかるんですか?」
「だいたいだがな。それにしても綺麗に使っている。手入れはもちろん、魔力を通すのもなかなかうまい。さらに、何度も切っているはずなのに、それに見合うほどの傷もない。お前はまさに、天才だな。」
「ありがとうございます。自信がつきました。」
「そうか!そりゃー、良かった!待ってろ。」
「ほら、できたぞ。」
そう言って渡されたのは、買ったばかりの新品かと思うほど綺麗になっていた。
「ありがとうございます。」
「いいってことよ!また何かあったら来い。」
「では1つ、オススメの防具屋はありますか?」
「あー。それなら、この道を真っ直ぐ進んだところにある。ダッドのやつに俺からの紹介って言えば多分作ってくれる。」
「ありがとうございます。それでは。」
ということでやって参りました。防具屋。
「すみません。ダッドさんはいらっしゃいますか?」
「俺がダッドだが、誰だ坊主。」
「レイと申します。デッドさんの紹介できました。」
「なに!?デッドの紹介だと!?そうかそうか。わかった。どんな防具がいい?」
「そうですね。動きやすいのをお勧めでお願いします。」
初めはただの子供を見るような目をしていたが、デッドさんの名前を出した瞬間に態度が変わった。デッドさん、恐るべし。
「そうだなぁ、オーガのシャツとパンツ、あと、スライムと黄金亀の靴だな。そういえば坊主、魔法は使うのか?」
「はい。」
「それならオークジェネラル亜種のマントだな。合計で150000ゴールドだ。」
「はい。」
お金は家を出る際に500000ゴールドもらった。
ちなみに魔物にはFからSSSまでランクがあり、オーガはCランク、スライムは種類が豊富で弱ければF、強ければSランクで黄金亀はCランク。そして何よりBランクであるオークジェネラル、その亜種、つまり異常種は1つランクが上がりAランクとなる。とても初心者がつけるものとは思えない装備だ。武器を含めて。
「はい。まいどあり!」
「あっ!アイテムポーチを売っている店をご存知ないでしょうか?」
ということで来ました、魔道具屋。そこには店員らしいおばさんがいた。
「すみません。アイテムポーチをいただけませんか?」
「レベルは?」
「?レベル?」
「知らないのかい?許容量だよ。」
「では最高レベルのを。」
「200000ゴールドだよ。私の名前はミロ。何か欲しい時はまた来な。」
「はい。ありがとうございました。」
そういえば、初見で俺を侮らなかったのはこの人だけだな。ギルドもこんな感じならいいけど、父さんに色々教えてもらった後の今なら、それが起こる可能性がないことは容易に想像できた。
冒険者ギルド。ここが俺の職場か。外まで騒いでいるのが聞こえる。
俺が扉を開けると、大人たちは静まり返り、俺を一瞥すると興味を無くしたのか、また騒ぎ出した。
俺は気にせず、空いていた獣人の受付嬢のところまで行った。余談だが受付嬢はギルドの顔ということでどの人もかなり美人だ。よく、冒険者に口説かれるらしい。その際、冒険者から貢ぐだけ貢がせてくっつかなくて、破滅する冒険者もいれば、同じ受付嬢の好きな人と闘ったりするらしい。受付嬢、ヤバし。
「おはようございます。依頼ですか?」
「いえ、登録です。」
そういうと周りがまた静かになり聞き耳を立て始めた。受付嬢は俺の顔を見て驚愕している。恐らくまだ子供だからだろう。
「6歳から登録ができると聞いたのですが?」
「確かにできますが、本当にする人はあまりいませんので。えと、本当によろしいんですか?」
「はい。」
「それでは、こちらの紙に必要事項を記入してください。」
「全部書かないといけないんですか?」
「そんなことはありませんよ。スキルを隠したい人はたくさんいますから。」
「なるほど。」
「おい、ガキ。ちょっと待て。」
俺が紙に書こうと思ったらおっさんがいきなり俺のことを睨みながらやってきた。
「待ってください、アージさん!」
「安心しろよ、ちょっと懲らしめるだけさ。まだ早いってな。」
「何言ってるんですか!相手は子供ですよ。トラウマになったらどうするんですか!?」
「お前はどうだ?」
「いいですよ。その代わり賭けをしませんか?」
俺がそういうと周りははしゃぎだし、受付嬢はびっくりしている。
「俺と賭けだと?おいおい、俺も舐められたもんだな。いいぜ?で、何を賭ける?」
「150000ゴールド。俺のすべての所持金です。ですので、150000ゴールドでいかがですか?」
「おいおい、お前が150000ゴールド賭けるなら俺は倍かけてやるよ。言っとくがイケメンだからって手は抜かねーぞ?」
「?わかりました。」
「何がわかりました、ですか!あの人はDランク、一人前と認められた冒険者ですよ!?」
「そうなんですか?ならもし俺がこの試合に勝ったらランク、考えてくれません?」
冒険者に登録したばかりだと例外なくFランクスタートになるため、考え直して欲しいとお願いしたのだ。
「何言ってるんですか!?勝てるわけないじゃないですか?」
「何言ってるんですか?負けるわけないじゃないですか。」
「なんだと!ガキのくせに生意気言いやがって!こっちに来い!訓練場に行くぞ!」
「あっ!待ってください。」
そんなこんなで訓練場に野次馬も一緒に向かった。
その途中に鑑定をしてみた。
【ステータス】
アージ
人間
レベル 37
HP 100
MP 30
STR 120
DEF 100
AGL 80
スキル
剣術 Lv3
身体強化 Lv3
こいつでDランクなのか?なら俺はAランクくらいならいけるかな?
ちなみに俺の一年の鍛錬の成果はこんな感じ。
【ステータス】
レイ
人間
レベル1
HP 150
MP 150
STR 150
DEF 100
AGL 170
スキル
剣術 Lv10
拳術 Lv8
柔術 Lv9
火魔法 Lv6
水魔法 Lv6
風魔法 Lv9
土魔法 Lv4
雷魔法 Lv9
氷魔法 Lv10
身体強化 Lv9
詠唱破棄
ユニークスキル
レベル促進
フォースイーター
全魔法適性
完全鑑定
完全偽装
重力魔法
となった。Lv10もある。更に、新たなユニークスキルを手に入れた。
➖重力魔法➖
重力を操る魔法。1/6〜3倍まで。
なかなか便利である。思いついたきっかけは、兄さんの騎士になるお祝いのためにパーティーを開く時の手伝いで重いものを運ぶ時に軽くできないかと思い、開発した。
さぁーて。この魔法だけで勝ってみせよう。
「あの、本当によろしいんですか?」
「ああ。ありがとうございます。心配してくれて、受付嬢さん。」
「わかりました。無事を祈ってます。それと、レナです。そう呼んでくれて構いません。
心配して最後の忠告をしに来てくれたのだと思ったら、名前を教えられて、思わず笑ってしまった。なるほど、レナはKYなのかな?
「笑わなくてもいいじゃないですか・・・。」
「っと。すいません。まさかこのタイミングで名前を教えられたもので。つい。」
「もういいです!アージさんも来てください。」
俺とアージさんが向かい合った。
「賭け、忘れるなよ?」
「もちろんです。っあ!レナさん、ランクのことお願いしますね?」
「もし勝てたらギルドマスターに進言してみます。」
「はい。それでは始まりの合図をお願いしますね。」
「わかりました。」
そこまで言うと、みんなが後ろに下がった。ニヤニヤして俺を見る人や、俺を哀れむ視線や心配する視線、アージさんを軽蔑する視線など様々な視線がある。心配する視線があることに驚いた。しかも全員女性。なぜだ?
それはともかく、合図が降りる。
「始め!!!」
その言葉と同時にアージさんが踏み込んだ。
そして俺はその瞬間を待っていた。
「『プレッシャー』」
これが重力魔法の発動のトリガーである。本来は詠唱が必要なのだが、詠唱破棄を持っているためその必要もない。そして俺が発動した瞬間、誰もが呆然とした。
「うあああぁぁぁぁぁ!!」
俺が設定したのは1/6倍。すなわち、思いっきり飛び込めば、普段よりも飛び込んでしまう。その結果はわかるだろう。
「ぐはっ!」
壁に衝突して気絶した。
誰もがアージをバカにできない。なぜなら何が起こったのかわからないからだ。
「レナさん。」
俺が呼びかけると我に帰ったレナさんが「勝者、レイさん!」と言った。野次馬が俺の周りに集ってさっきやったことを聞いてきたが、答えないとわかるやパーティーの勧誘やら、親交を深めようなどといってきた。もちろんすべて丁重に断った。
俺はアージー少し叩いて起こした。
「俺は負けたのか。そうか。やるな、ガキのくせに。」
「最後のは余計ですよ、アージさん。」
「ガキだろ?実際。ほら。」
笑いながらアージさんが賭けの商品をくれた。
「悪かったな。色々と。」
「いえいえ、そんなことよりこれから何かある時はよろしくお願いします。」
「おう。任せな。」
「それじゃあ、レナさん俺のランクってどうなりますか?」
「ギルドマスターに相談してきます。少し待っていてください。」
緊張しますね。
私は今、約束を守るためにギルドマスター室の前にいる。ここは何度来ても緊張するのだ。だって中にいる人があの人だから。
コンコン。
「入りなさい。」
「失礼します。ギルドマスターにお願いがありまして。」
そう言って私はギルドマスター室に入った。そこにいたのは、誰もが認めるほど美しい、そんなエルフだ。毎回ここに来るたびに緊張するのは、この圧倒的美と自己を比較してしまうからだ。レイさんもかなりイケメンですよね。やっぱりギルドマスターみたいな人が好みなのかしら?って、私は何を!?
私はそれをひとまず横に置いた。
「レナが?珍しいわね。どうしたの?」
「冒険者登録に来た子が少し上のランクから始めたいと。」
「訳ありなの?」
訳ありとは、貴族の連中かという隠語だ。
「いえ、そういうわけではないのですが。」
「そんなに実力があるの?」
その問いに私は詰まってしまった。
「・・・・・。」
「?どうしたの?レナ?」
「・・・わかりません。」
「?それってどういう意味?」
「Dランクのアージさん、ご存知ですよね?」
「ええ。Cランク程度の実力があるけど、態度に問題があってランクアップできないあのアージ?」
「はい。そのアージさんと模擬戦をしたのです。」
「アージが負けたのね?なら強いんじゃないの?」
「・・・どうやって倒したのかわからないのです。」
「ッ!!!」
ギルドマスターが目を見開いた。
「あなたが見えなかったの?」
「はい。」
「なるほど。あなたはどうするべきだと思う?」
「勝ったことは間違いないのでCランクスタートさせればいいかと。」
「いいでしょう。そうしなさい。期待できそうね。その人。」
「そうですね。見た目がアレなので喧嘩を売られやすいと思うのでいい牽制にもなるでしょう。」
「見た目?」
「ああ。言っていませんでしたね。その子、今6歳なんですよ。」
「・・・・・・はい?」
私は部屋で仕事をしていた。王都は冒険者の量は多いが、全員おじさんとか、女の冒険者も色々と荒く、花がない。少しは若くてきちんとしている人はいないのかしら?
そんなことを考えていると、レナがやってきた。
話を聞いてると新人冒険者が一人前の冒険者を下した。という話だった。しかも誰も何が起きたか分からなかったと言っている。
受付嬢はたまに冒険者に難癖をつけられるためCランク程度の実力がなければなれないようになっている。そんなレナが見れないとは、やるわね新人君。
レナはその新人君をCランクスタートさせるという。妥当なところだと私も思った。しかし次の言葉が私を驚かせた。
「ああ。言っていませんでしたね。その子、今6歳なんですよ。」
6歳がアージに勝った?いるのね、天才って。この時、ギルドマスター、メアはレイに興味を持った。
まさか、有力な若手が欲しいと思った瞬間に。ふふっ、フラグ立てちゃったかしら?若すぎるけど




