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第五夜 強襲 13
「良かったじゃん、シオン!晴れて魔法使いの仲間入りだよっ!」
「オレが…魔法使い…」
「ま、驚くのも無理はないよな。これから毎日特訓して使えるようにしていこうぜ」
士音の肩を軽く叩くと、詩歌は破顔一笑し、紋章を眩しそうに見上げた。
「士音君、すごいすごいっ!魔法使いになったんだね!」
「あー、実感が沸かないけど嬉しい。呪文とかそういうのはあるの?」
小さな子どものようにはしゃぐ野絵を見て優しく笑うと、詩歌の方へと向き直る。
「呪文は来るべき時がきたら使えるようになってる。楽しみにしてろよ」
「来るべき時…」
「さて、次はツッキーだな」
野絵の方を見ると、湊と手を取り喜んでいる所だった。
(ようやく…この時が来たか)
遠い目をしながら野絵を見守る詩歌を、湊は見逃さなかった。
背中越しに見られていた為、野絵は詩歌の視線に全く気付かない。
ひどく寂しく、野心に燃えるその瞳に。




