第五夜 強襲 8
重厚なカーテンで締め切られると、まだお昼過ぎとはいえ室内が薄暗くなった。
「何をするんですか?」
「いいことだよ。ノエノエ~!!」
茶化すようなジゲンの言葉に冷たい瞳を向けると、野絵は構わず言葉を続ける。
「市ノ宮先輩は待たなくていいんですか?」
「ああ、あいつ今日は演劇部の方に顔出しててな。どうしても抜けられないんだとさ」
「そうなんですか。それじゃあ仕方ないですよね」
演劇部と聞いて、何故だかすんなり納得してしまう。
彼女の二面性のある性格のせいだろうか、それとも完璧なまでの容姿のせいか分からないが、すごくしっくりきたのだ。
「二人共こっちへ来てくれ」
図書室の中でも一際広い角のスペースへと来るように指示され、二人は素直に従った。
暗がりの中、転ばないようにと後ろにいた士音が軽く背中を支えてくれて、紳士ぶりに頭が下がる。
「じゃあ、ここからはジゲンにも手伝ってもらうか」
「アイサー!やーっとボクの出番だね。もー昨日からずっと待ってたんだぞ!!」
表情はよく分からないが、少し拗ねた口調なのは何となく分かった。
「すまんすまん!昨日は色々あってな…」
「はいはい。それはもー聞いたからいいよ。それより自己紹介がまだだったよね。ボクの名前は富柄湊!偉大なる魔法使いにて、偉大なるオタクなのだぁっ!!」




