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第二夜 獅子羽高校入学 2
「だってあかりちゃんがあまりにも酷いから高校デビューした方がいいよって言ってたんだもん」
「そうね、それはお母さんも大賛成。年頃の娘があんな格好はいけないわ」
「別に私はあのままでも良かったけど…」
口を尖らせ反論すると、扉の前まで来るよう手招きされる。
それに従い近づくと、思いきり頬を引っ張られた。
「あのままでいいわけないでしょー!折角の青春時代が灰色になっちゃうでしょうが!絶対絶対戻ったらダメだからね!!」
「いひゃい、いひゃいよ!」
「そ、れ、に、あのままじゃ恋も出来ないわよ?」
「恋…?」
甘い声で耳打ちされ、思わず赤くなる。
「そ、恋。いい人ゲットしなさいよ」
「こ、恋って別に私はそんなのどうでも…!!」
―――…またすぐに会えるさ
何故だか満月の夜に出会った少年の顔が急に頭に浮かぶ。
(…って、何であの人の顔が?!)
「とにかくもうご飯出来てるから、早く下に降りて来なさいよ」
硬直したままの野絵を見て、母は呆れた様子で下へ降りて行く。




