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第五夜 強襲 2
声の主は本棚の向こうにいるらしく、何やら小声で話し始めた。
「…な…冗談…ええ…?でも…」
ぼそぼそと蚊の鳴くような声で、何やら呟いているので、士音は本棚の端からそっと姿を伺う。
すると漫画コーナーの所に黒髪ツインテールの少女がいるのが見えた。
野絵と同じように座り込み、真剣に本を読み耽っている。
「誰かいたの?」
後ろから野絵が覗きこんできたので、士音は静かに頷く。
(さっきまで何の気配も感じなかったのに…)
「あれ?でも誰もいないよ」
「えっ?」
一瞬目を離した隙に、先程の少女の姿が忽然と消えてしまっていた。
長い時間読んでいたのか、本が至るところに散らばっている。
ざっと見た感じ20冊以上はあるだろう。
「おかしいな、さっきまでそこに女の子が…」
「マンガを読みまくっていたって…?」
「そうなんだ。黒髪の女の子が真剣に…って、わぁっ?!」
耳元からいきなり見知らぬ声がしたので、慌てて振り向くと、いつの間にか野絵の隣に先程の少女が立っていた。




