第五夜 強襲
放課後、今日は図書室に来るようにと、詩歌からの指示があったので、 士音と二人で図書室までやってきた。
「こんにちはー!」
そっと扉を開けると、目の前に開けた空間が映る。
野絵の身長が二人分位収まりそうな高い本棚が、規則正しく並び、綺麗に分類されている。
本独特の香りが少し漂い、凛とした空間に胸が踊った。
「あー、まだ誰もいないみたいだね」
「し、士音君っ!少し本見てきてもいいかな?」
興奮を押さえきれない野絵は、瞳を輝かせ士音に尋ねる。
今にも走っていきそうな野絵に士音はいいよと頷くと、予想通り一目散に走っていった。
「野絵、図書室は走っちゃダメだよ」
彼女の行きそうなコーナーなら何となく分かる。
自然科学のコーナーへと向かうと、野絵はもう二冊程手に持ち、しゃがみこんでいた。
「いい本あった?」
「士音君、凄いよ!獅子高の図書室ってマイナーな本まで揃ってるよ!!」
「図書室、思ってたより大きいしね。何か借りたい本とかあった?」
「うん、いっぱいあるかも。見て見て、この図鑑なんてお小遣い半年分位貯めないと買えないの。全ページカラーでとっても綺麗なんだよ!」
野絵が見開いている図鑑を覗きこんだ時、背後から本をめくる音がしたので、士音は慌てて振り向いた。




