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第四夜 天使の裁き 23
「それとも遊んで行くか?砂遊びとか貝殻拾いとか」
「しません!砂遊びはもうこりごりです!!」
「すまんすまん、冗談だよ。夏になったらまた皆で来ような」
野絵の頭を軽く叩くと、彼は足早にその場を立ち去ってしまう。
(みんなで…)
詩歌の後ろ姿を見ながら、野絵は思わずニンマリする。
さっきまでの恐怖はもうすっかり払拭されていた。
(今日こそは絶対言わなきゃ!!)
「成城先輩、市ノ宮先輩!!」
「ん…?」
「何?」
数メートル先を歩いていた詩歌は笑顔で振り向き、近くにいた真砂は少し怪訝そうな顔で野絵を見る。
「あの、私二人に言いたい事が…!」
野絵の背中を押すように突風が吹く。
小柄な彼女は思わず前のめりになるが、体制を整え、風に負けないよう大きな声で叫ぶ。
「天文学部に入ってくれませんかーーー?!!!」
今日一番の大声を出し切った後、野絵はとびきりの笑顔を見せた。




