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第四夜 天使の裁き 22
深い深い海の底のような瞳が、野絵の一言で光を灯すのを見たような気がした。
(士音君って、ほんとに優しい人だなぁ)
「それから市ノ宮先輩!」
「な、何…?」
野絵の手当てが終わった士音は、今度は真砂に向き直り強い口調で叫んだ。
思いがけない言動に一瞬、真砂は怯む。
「市ノ宮先輩もいくらベテランとはいえ、女の子なんですから無理はしないで下さい!必ずオレか詩歌を呼んで下さいね!」
「お、女の子…?」
「そんなに華奢な体で、何かあったらどうするんです?頼りないかもしれないけど、男のオレも呼んで下さい」
「さ、佐山くぅん…!!うん、分かったわ。今度からそうする!!」
顔中真っ赤にさせて、真砂は士音を食い入るように見つめる。
(やっぱ、この子可愛い!!絶対欲しい!!手に入れる!!!!)
(…よほど怖かったのかな?良かった、間に合って)
「んじゃ、役者も揃ったしそろそろ帰りますか」
海風が気持ちいいのか、詩歌は思いきり背伸びをすると、夕空を仰ぐ。
気が付くと、一番星が煌々と光り輝いていた。




