第四夜 天使の裁き 20
真っ直ぐな澄んだ瞳は、野絵の胸に突き刺さる。
「制服、砂だらけじゃないか!足も擦りむいてるし…。ちょっと待ってて!」
そう言うと、彼は鞄から白い木箱を取り出した。
両手の平に収まるくらいの小さな箱だ。
「何だそれ?救急箱…??」
「昨日買ったんだ。野絵が魔法の事心配してたし。もしもの事があったらと思って…」
詩歌の質問に答えながらも、士音は機敏な動きで応急措置を始めていた。
「さすがプリンス君!愛のなせる技だな!!」
「ちょ…っ?!こんな時に何言ってるんだよ、詩歌!」
耳まで真っ赤になりながらも手の動きを止めない士音を見て、野絵は感動を覚える。
「士音君…、ありがとう」
心からの感謝を伝えると、士音は柔らかく笑った。
「野絵が無事で本当に良かった。だけど危険な事をする時にはオレに一言言ってほしい」
「え…?あたたっ」
消毒液が傷口に入り込み、軽い悲鳴をあげる。
「あ、ゴメン。野絵」
「ヘーキ、平気!それより危険な事って…?」
まさかリンチにあっていたという事がばれてしまったのではないか、と野絵は内心焦る。
かなり強烈な洗礼を受けた訳だが、これから先、謎の先輩とも仲間としてやっていかなくてはならないという事を危惧する野絵。
何て誤魔化そうか頭の中で言い訳を考えるが、上手い言葉が見つからない。




