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第四夜 天使の裁き 19
「血相変えて飛び出していこうとしたから慌てて止めたんだよ。全くまだ力も無いのにどこ行くつもりだったんだか」
呆れた口調で話す詩歌の言葉を、野絵は頭の中で何度も反芻する。
「士音君…」
昨日、悲鳴を嗅ぎ付けてくれたのも士音だった。
まだ出会って間もないのに、彼は必死に自分を探しに来てくれてるらしい。
詩歌はこの謎の先輩の事を知ってるから分かるとしても、士音が何故駆けつけてくれるのか謎だった。
(どうして私なんかを…?)
考え込んでしまう野絵を詩歌は不憫な瞳で見つめる。
(鈍すぎだろ…ツッキー)
「あ、噂をすれば…!」
先程詩歌が立っていた所と同じ場所に、士音の姿が見えた。
強風に扇がれながら、彼はこちらへ向かって走ってくる。
「士音君!」
「野絵!!」
相当走ってきたのだろうか、額には汗がびっしり吹き出ていて、前髪が張り付いてしまっている。
肩で息をしながら、士音は勢い良く野絵の肩を掴んだ。
「野絵、大丈夫?!ケガとかしてない?!」
「う、うん。大丈夫だよ!」




