第四夜 天使の裁き 16
「はい、なんとか…」
力無く笑うと、青い顔をした詩歌と目が合う。
いつも優しげなその瞳は、不安げに揺れていた。
「お前、砂だらけじゃないか!」
「大丈夫です。ちょっと転んだだけですから」
「こんな砂だらけで大丈夫な訳ないだろう。どこかケガとかしなかったか?!」
優しい口調に再び涙腺が緩みそうになってしまう。
必死にこらえ、無言で立ち尽くしている野絵の肩や背中を詩歌は軽く叩いてやる。
一通り汚れを落とすと、詩歌は鋭い目付きで真砂を睨んだ。
「エンゼル!お前何してんだよ?!これじゃあ脅迫だぞ?!」
「…フン、その女が気に食わないからやった。それだけだ」
「気に食わないって…ツッキーは大事な仲間だぞ?!やっていい事と悪い事の区別位つくだろ?!」
いつもより強い口調の詩歌に責められ、真砂はつまらなそうにそっぽを向く。
「………大事だと思ってるのは詩歌だけだろ」
「何っ?!」
拗ねたように呟く真砂に詩歌は一層声を荒げる。
「ま、まあ成城先輩!私ケガもしてませんし、もう大丈夫ですから…」
事を大袈裟にしてはいけないと思い、口を挟んだ野絵だったが、詩歌の怒りは収まらないらしく、さらに真砂を追い詰める。




