第四夜 天使の裁き 15
(助けて……、成城先輩っ!!)
何故だか笑顔の詩歌が頭をよぎる。
どうしてだか分からない、でも彼なら助けに来てくれるような気がしたのだ。
「ツッキー!!」
聞き慣れた声がして、はっとして目を開ける。
急いで振り向き、声がした方を見ると、道路と砂浜の境目に詩歌が立っていた。
「成城先輩…っ!!」
強風の向こうに彼の姿が見える。
それだけでもう救われたような気がした。
(助けに…来てくれた!)
彼の事なんてまだ何も知らない。
突然降ってくるように現れて、魔法だなんて突拍子も無いことを言ってこちらを混乱させたりして…。
本当に謎だらけの人だと思う。
でも一つだけ分かった事がある。
それは彼が、心から信頼出来る人間だということ。
詩歌がこちらに向かって走って来るのを見て、野絵は残っている力を振り絞り、立ち上がる。
「チッ、ここまでか」
詩歌の姿を確認した真砂は舌打ちをすると、思いきり睨み付けてきた。
「いい気になるなよ、ブス女。お前なんていつでも潰せるんだからな」
脅すような口調とは反するように、体を拘束していた鎖が消え、天使の姿も消えていく。
「ツッキー、大丈夫か?!」
息を切らして走ってきた詩歌を見て、野絵は安堵のため息をついた。




