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第四夜 天使の裁き 14
声は途切れ途切れで力が無く、聞き取るのが困難だったが、瞳は強い意思を持って輝いていた。
その事が真砂の心を大きく揺らしたことに野絵は気付かない。
「は?!何言ってんだ、テメエ。頭おかしいんじゃねえのか?!」
ドスの聞いた声は更に強みを増し、野絵に恐怖を植え付ける。
「…あ、はは。そうですね、そうかも…」
力無く笑う野絵を見て、勘にさわったのか真砂は思いきり地面に投げつけた。
新品の制服は砂だらけになってしまい、悲しい気持ちと親に申し訳ない気持ちが交差する。
「ムカつく野郎だな。一偏痛い目に遭わないとわかんねえか」
真砂の瞳が剣呑に光る。
これ以上は危険だ、と察知した野絵だったが、体がすくんで動けない。
(誰か…誰か助けて…!!)
「パワーズ、やれ!!」
命令口調で真砂が叫ぶと、異形の天使が軋んだ音を立てて数歩動いた。
血を連想させる瞳がこちらを見下ろし、野絵は心臓を掴まれたような気持ちに陥る。
(助けて…)
涙が溢れ、視界がぼやける。
天使の鎖が再び動き出した時、野絵は思いきり目を閉じた。




