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第四夜 天使の裁き 13
(でも、それでも…)
「泣けよ!早く泣きわめけ!!」
真砂の指に力が入る。
「助けでも呼んだらどうだ?!ククク、誰も来ないだろうけどな!」
「…っ、良かった…」
「あ?!」
野絵の意外な一言に真砂は思わず、力を緩める。
チャンスとばかりに野絵は横に大きく体を傾けると、指から逃れるようにその場に倒れ込んだ。
「…かはっ、…はぁ、はっ…」
いきなり酸素が肺に入ってきたのでうまく空気が吸えず、たまらず咳き込む。
倒れた拍子に口の中に砂が入り、土の味が広がった。
体が自由になり、思わず涙目になる。
今頃になって恐怖で体が震え出してきたので、自分で自分の体を抱き締めた。
(怖い、怖い怖い怖いっ!…でも!!)
溢れ出てくる涙を拭おうとしたのだが、真砂に無理やり腕を引っ張られ起こされる。
再び対峙する形になり、深紅の瞳に睨み付けられ心臓が早鐘のように鳴った。
「あ?!良かったってどういう意味だ?!」
「……魔法じゃなくて…、自分の言葉で、ぶつかってきて…くれたから」




